以前、「プランニングの誤謬」について説明した。
ダニエル・カーネルマンとエイモス・トベルスキーが行った実験結果だ。
学位論文を書くのにどれくらいの時間が必要かと問われた学生たちは、平均して33.9日、最悪の事態を想定しても平均48.6日で完成すると回答した。
ところが、実際にかかった時間を後刻平均すると55・5日になった。
「プランニングの誤謬」は、人間は未来にかかる時間の想定を楽観的に間違う傾向を持つことを解明した。


学位論文という「やらなければならない課題」でさえ、想定よりも2倍近くの時間がかかるのだから、「やってみたい」と思っている事柄であれば、想定している時間の何倍かかるかわからない。
多くの人は、将来あれもやりたいこれもやりたいと考えることが多い。
「世界一周旅行をしたい」「文学全集を読破したい」「大学院に入りなおして○○という学問を究めたい」「英語をマスターしたい」…等々、たくさんの「やりたい」ことを抱えている。
しかし、「やりたいこと」の三分の一もこなす時間がないのが現実だ。
「やらなければならない課題」ですら、私たちには二分の一程度の時間しか残されていないのだから。


そうなると、「やりたいこと」に優先順位を付ける必要がある。
「絶対にやりたいこと」「やりたいこと」「できればやりたいこと」と順位付けをして、「絶対やりたいこと」の8割くらいできればいい方だろう。


拙著「最強の勉強法」で書いたが、試験までの「可処分時間」とやるべき課題をこなす「必要時間」を計算すると、「可処分時間」があまりにも少ないことに愕然とする。
泣いて馬謖を斬るように、やるべき課題の中から優先度の低いものを削っていくと、残された課題は驚くほど少なくなる。
結果として、驚くほど少ないと思えた課題をきちんと試験当日までに消化すれば、十分な準備ができる。
このように優先順位を付けることは、「やりたいこと」の中から優先順位の低い事柄を泣く泣く削っていく作業だ。


優先順位を付けることができたら、「捨てる勇気」を持つことが何よりも大切だ。
優先順位の低いものを泣く泣く捨てていく勇気。
これを持つことができないと、一番大切なことができないまま人生が終わってしまう。
人生は短い。

常日頃から、優先順位の低いものには手を付けない習慣、優先順位が低いとわかったら捨ててしまう習慣を持とう。