「地球上のだれもが、たった6人で隔てられているにすぎないのよ。(中略)わたしもあなたも、この地球上のあらゆる人と、たった6人の道筋で結ばれているの。深遠なことでしょう」

これは、1991年のジョン・グレアの芝居「六次の隔たり」で、ある女性が娘に語る台詞です。

 

社会心理学者スタンリー・ミリグラムは、「任意のアメリカ市民を2人選べば、この二人は平均で知り合い6人を介してつながっている」と説きました。

 

ここで少し検証してみましょう。

(Facebook等で実際に会ったこともない友達も含め)一人が100人とつながっているとしましょう。あなたと直接つながっている100人もそれぞれ100人とつがなっているので、あなたの友達の友達は1万人になります(100人×100人)。

友達の友達の友達は100万人になり、その友達となると1億人、あれ、5番目の友達(友達の友達の友達の友達の友達)で100億人になってしまいました。

 

スタンリー・ミリグラムが提唱したのは1967年なので、SNSが普及した今日では4人くらいを介してつながってしまうのかもしれません。

 

このような人と人とのつながり研究する「社会ネットワーク分析(SNA)」が急速に発達したのは、アメリカの同時多発テロ以降のことです。

従来の戦争では戦闘が繰り広げられる地勢を理解することが重要でした。ところがテロリストの力は地理的には決まっていません。そこで、テロ対策として新たに導入された「地勢」がネットワークなのです。

 

詳細は省略しますが、つながりには「強弱」があるし「距離」もあります。様々な要素を分析し、各人の「次数得点」「媒介性得点」「近接性得点」を評価してテロリストのネットワークを暴こうという訳です。

 

かつて、故鳩山邦夫氏が「(私の)友人の友人はアルカイダ」という発言をして波紋をよびました。

しかし、先程の例だと「友人の友人」は1万人になります。その内、あなたが直接知っている人は100人なので9900人は知らない人たちなのです。

政治家となれば、本人だけでも(強弱すべて含めれば)1万人くらいは友達つながりがあるでしょう。すると「友達の友達」は(少なく見積もっても)100万人。直接知らない99万人の中にアルカイダがいても、ちっとも不思議ではありません。

 

SNSの発達によって、日々私たちと世界をつなぐ「次元の隔たり」は少なくなっています。Facebookの友人を一人平均1000人になると、「友達の友達」だけで100万人になります。もう一つ上の次元になると1億人となって、日本人の全人口に近づきます。

 

今は、Facebook等のSNSは一つの会社が集中管理していますが、各人がブロックチェーンで個々につながるようになった、いったいらどうなるのでしょう?

 

テロ対策のような社会防衛システムがはるかに強固になることは、おそらく間違いないでしょう。また、ネットワークが大きなビジネスにつながる可能性も十分あります。

 

スモールワールドの恩恵を受けるためには、最低限「英語の読み書き」くらいはマスターしておいたほうがいいかもしれません(会話はさほど重要ではなくなります)。

日々刻々と狭くなりつつある世界。気がついていたら驚くべき変化が起こっているかもしれません。

それが素晴らしい方向での変化であることを願っています。