今回は、「イギリス人アナリスト日本の国宝を守る」(デービッド・アトキンソン著 講談社+α文庫)をご紹介してます。


本書は、日本の大銀行を中心に17年間アナリストをやってきた著者が、日本の企業経営者のいいかげんさや日本人の大きな誤解を歯に衣着せぬ論法であばきたて、その上でこれからの日本がどうやっていけば成長するのかを説いています。


本書は以下の6章で構成されています。


第1章 外国人が理解できない「ミステリアス・ジャパニーズ現象」

第2章 日本の「効率の悪さ」を改善する方法

第3章 日本の経営者には「サイエンス」が足りない

第4章 日本は本当に「おもてなし」が得意なのか

第5章 「文化財保護」で日本はまだまだ成長できる

第6章 「観光立国」日本が真の経済復活を果たす



日本が高度経済成長を成し遂げたのは人口で説明でき、日本人が特別に優れていた訳ではない。


効率性をあらわす一人当たりの購買力平価GDPは世界で25位にすぎない。


日本の企業経営者は数字に基づいた分析ができず、数字で説明してもわけのわからないことを言って押し通す傾向がある。


コンセンサスに拘っていると時間ばかりを浪費して何も決まらない。多数決の導入が不可避。


「おもてなし」ができているのは大いに疑問。日本の高級旅館などは客の都合ではなく旅館の都合を押しつける「供給者側のサービス」だ。


日本の観光業収入はマカオの29%、香港の3分の1しかない。


効率を向上させて観光業を盛り上げることができれば、日本には大きな伸びしろがある。


(引用・要約は私の責任です)


----------------------------


数字や客観的な事実を挙げてここまで叩かれると、ある意味爽快感すら感じます。


私自身金融業界でサラリーマンをやっていましたが、本当に役員クラスにはどうしようもない人々がたくさんいました。

しかし、これは「タテ社会の人間関係」(中根千恵著)を読めばすぐに理解できるように、日本社会の潜在的構造なのです。

タテ社会で上になるのは、能力がある人間ではなく調整力が優れた人です(それすら怪しいトンデモ役員もいましたが)。

また、堺屋太一氏の講演で、石田三成以降、中間管理職が権限を掌握して経営者という御輿を担ぐシステムが出来上がったという話があったように記憶しています(かなり曖昧です)。


供給者側のサービスというのは、今でもあちこちで目にします。

銀行の合併でキャッシュカードが変わった際、新しい銀行名のカードを入手するには銀行窓口に足を運ばなければならなかったと記憶してます。

銀行の都合で合併したのに、なぜ客が足を運ばなければならないのか大いに疑問でした。


数字に基づく分析や論理的な分析に対して感情面だけで反発をする日本人は(自戒を込めて)驚くほどたくさんいます。


ただ、日本の労働者の質の高さは著者も大いに評価しており、真面目によく働く労働者を大いに活用していくのが今後の課題になるのでしょう。


数字と論理に基づいた批判は(感情的になることなく)大いに参考にすべきだと考えます。

主観的な批判や論理的に反論できる部分もあるので、全面的に信用する必要はありません。

しかし、受け入れるべきは素直に受け入れて、新たな対策を考えることが重要だと考えています。


それにしても本書のタイトルはいけてません。

タイトルだけだと”国宝の話”だと誤解してしまいますよね(^^;)


イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る 雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言 (講談.../講談社
¥907
Amazon.co.jp