今回は、「農山村は消滅しない」(小田切徳美著 岩波新書)をご紹介してます。


本書は、ベストセラーになった「地方消滅」へのアンチテーゼとして、実証的かつ論理的に書かれた一冊です。


本書は以下の7章で構成されています。


1 「地方消滅論」の登場

2 農山村の実態

3 地域作づくりの歴史と実践

4 地域づくりの諸相

5 今、現場では何が必要か

6 田園回帰最前線

7 農山村再生の課題と展望


次のような内容が特に興味深い点です。


農山村集落は、人口減少が続いても「臨界点」に達するまでは再生可能という強靱さをもっているものの、「諦め」が入り込むと急速に消滅にすすむ。

「地方消滅」論は、諦めを加速させる恐れがある。


地域づくりの本質的要素は、「内発性」「総合性、多様性」「革新性」の3つである。


地域づくりに必要なのは、使途が限られた単年度の補助金ではなく、、「内発性」「総合性、多様性」「革新性」に見合った交付金と補助人という人的支援である。


農山村への移住のハードルとしては、「仕事」「住宅」「コミュティ」の3つが指摘されてきたが、最近では変化が生じている。


(引用、要約は私の独断です)


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「地方消滅」は、特に地方在住者や地域おこしに従事している人たちに大きな衝撃を与えました。

最近、「地方消滅」の提言に反対する声が上がっており、陰謀だと指摘する声も聴かれます。

そのような中で、実証的かつ論理的に書かれているのが本書です。


特に、著者が何度も強調している、「内発性」「総合性、多様性」「革新性」の3要素は極めて重要で、地域作りに成功しているケースに共通するものです。


農山村への移住のハードルとして、私が最も危惧しているのは「コミュニティ」です。

前回の読書ブログでご紹介した「タテ社会の人間関係」で書かれていたように、日本社会では「ウチの者」と「ヨソ者」を明確に区別する傾向があります。

都会出身の妻が地域コミュニティに入ることができず、非のない夫と離婚するというケースを、私はたくさん見てきました。

熊野市に骨を埋めるという覚悟で赴任した名古屋の弁護士さんが数年で帰ってしまったという例もあります。

このように、地域コミュニティという障壁を解消することができるかどうかが、農山村への移住の成否を握っていると考えています。



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