誰の満足度も下げることなく少なくとも誰か1人の満足度を上げることを、経済学では「パレート改善」といいます。

そして、その究極である「誰の満足度も下げることなく、少なくとも1人の満足度を上げることができない」状況を「パレート効率的」といいます。


つまり、日本全体で考えたとき、全国民が一番ハッピーになれる状態がパレート効率的な状態であり、そのような状態をつくることは可能なのでしょうか?


厚生経済学という学問では、次の2つの基本定理が成り立つ時に日本人全員がハッピーな状態(つまりパレート効率的)になると説きます。


1 (水や砂糖のように)消費量を連続に変化させることができ、かつ消費量を僅かに増やすと効用(満足度)が上がるような財が、各消費者にとって1つはあるという条件を満たせば、完全競争市場均衡はつねにパレート効率的な資源配分をする。


2 いかなるパレート効率的な資源配分も、(所得再配分を行うことによって)完全市場均衡を通じて達成できる。


1の条件である「水や砂糖のような財」は現実に日本国内に存在しますので、全員がハッピーになれる資源配分は可能ですよね。

難しい用語に惑わされなければ、誰でもわかることです。


2はとても難しいです。

どうやって所得再配分をすれば、全員がハッピーな状態が実現できるのでしょうか?

必ず解答はあるのですが、経済学の数式ではそれは出てきません。


今の日本の貧富の格差を考えると、所得再配分として最良の政策は累進課税の強化ではないかと私は思っています。

億単位の所得を稼いでいて生涯どんなにがんばっても使い切れない資産を持っている人にとっては、これ以上お金が増えても満足度は上がらないでしょう。

他方、消費税アップや商品価格値上げで苦しんでいる人たち、もっとひどいケースだと飢え死にしてしまいそうな人たちにとっては、1ヶ月10万円ももらえたらとてもハッピー(場合によっては死ななくて済む)という状態になります。


そう考えると、消費税アップよりも累進課税の強化で使い切れないほどのお金を持っている人から税金を払ってもらって、貧困層に分配する方がパレート効率が達成できる(つまり全員がハッピーになれる)と、私は考えています。


累進課税という制度は、平等という点からすれば完全に不平等な制度です。

1億円稼いだ人が1割の1000万円を税金として納め、100万円稼いだ人が10万円の税金を納めるという同一税率であっても、たくさん稼いだ人の方が何の根拠もなく100倍の税金を納めるわけですから。


ましてや、累進課税となると、1億円稼いだ人は5000万円の税金を納め、100万円稼いだ人は税金を納めなくてもいいばかりか、補助金までもらえるのですから、一人一人を比較すれば明らかに不公平です。

税金をたくさん納めたからといって、銅像を建ててもらえる訳でもないですし、病院で優先的に診察してもらえる訳でもないのですから。


しかしながら、全体、つまり日本人全員を対象にすれば、全員がハッピーになれる方法は所得の移転、つまりたくさん稼いだ人たちから少ししか稼げなかった人たちへのお金の配分をするしか方法はないのです。


個人の平等を考えるか、全員がハッピーな状態になることを考えるか、それは置かれた人それぞれによって意見は異なるでしょうが、政策としては全員がハッピーを目指すのが筋でしょう。


はて、それなら何故に消費税アップがなされるのか?

選挙でその方針が支持されたのか?


みなさん自身でお考え下さいね。


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