今回は、「人はなぜレイプするのか」(ランディ・ソーンヒル、クレイグ・パーマー著 青灯社)をご紹介します。


最近、HIV感染者が複数の女性を強姦するなど、考えられない事件が起こっています。

海外でも、和姦ではありますが、HIVをたくさんの女性に感染させたとんでもない男性がいます。


私は、いままで強姦(致傷)という事件を扱った経験は少なからずありますが、少ない経験知ではありますが、犯人の男性が萎縮してしまって強姦そのものは未遂に終わっている案件ばかりでした。


仮に、自分だったらできるかと問われれば「絶対ムリ」と答えざるを得ません。

つまり、普通の常識ある男性にとって、必死で抵抗する女性を無理やり姦淫することなどできないというのが、私の感覚でありました。


ところが、日本のみならず、海外でも強姦犯罪は着実に増加しつつあるのです。

同じ男性として(また、私が担当した被告人として)、強姦犯人がどのような人物像なのか、極めて関心を持っております。

個人的に、娘ある身としての感覚でもあります。


本書は、進化論的考察から「レイプ」について論じています。


レイプというのは、驚かれるかもしれませんが、人間だけでなく昆虫や他の哺乳類にも存在する現象なのです。


人間を進化論的に考えれば、男性より女性のほうがセックスによるリスクははるかに高いのです。

言うまでもありませんが、男性は自分の遺伝子をいつでもばらまけるのに対して、女性は妊娠してしまうと妊娠期間中と子育て期間中の3、4年は自分の遺伝子を後生に残す機会を失われます。

ですから、そのリスクを覚悟してもいい相手を選ぶのが女性であって、男性は極論すれば性欲が処理できれば全くリスクを負いません。

典型例として、不特定の女性のポルノグラフィーを好んで見るのは男性だけです。


このような特質からすると、人類の本来の姿は一夫多妻制だったという研究結果が出ています。

女性としては、好まない男性の遺伝子をもらうよりは、他の女性と分かち合ってでも財力と権力を持っている左右対称の姿の男性の遺伝子をもらいたいわけです(見た目で左右対称の人間は、力も財力もある可能性が高いそうです)。


また、男性は、妊娠した女性の子どもが自分のものかどうかを異常なまでに疑う性格を持っています。

いつ何時、妻を寝取られて自分の遺伝子を継承していない子どもを育てるうリスクを負うかもしれないことを極度に怖れるのです。

ですから、妻にはできるだけ家にいて欲しいと願う男性が多いのが歴史的考察です。


そうなると、女性に選ばれなかった男性がとるべき手段は、強引に女性に自分の遺伝子を植え付けること、つまり強姦しかなくなるわけです。


女性としても、ボーイフレンドや夫以外の遺伝子を受け入れさせられるのは多大なるリスクですので、若い女性が排卵期にあるときは本能的に危険を避ける行動をとるようになります。

じっくり吟味して子育てのリスクを負ってもいい相手でない、知りもしない男性の子どもを懐妊することのリスクを避けるためです。


これは遺伝学的に説明できる事柄であるのに対して、社会学者やフェミニストは的外れな議論を繰り返したりしており、被害者である女性のケアや、ターゲットとなるような女性の特定を疎かにしたり、はたまた、男性社会では被害者女性の被った被害を軽視する傾向があります(和解金目的で被害届を出したのではないか・・・等々)。


あくまでアメリカ合衆国の統計ではありますが、レイプの加害者も被害者も20歳前くらいが一番多いそうです。

これは、男性の性欲の高まりと女性の懐妊可能性の高さの相乗効果でしょう。



正直申しまして、私には強姦既遂犯の心境が理解できません。

依頼を受けた事件の加害者も、(根が真面目なのか)既遂できる状態に自らの性器がならなかった人物ばかりです(ED状態です)。


それでも、確実に一定割合で強姦事件は発生し、被害者の苦痛は計り知れないものがあります(婚約者や夫からは強姦犯人の子どもではないかと疑われ、そうでなくても自分自身が慎重に選ぶべき相手を選べなかったのですから)。


これからの日本社会は、ストレスフルかつ暴力的な若い男性が急増すること間違いありません。

女性の方々は、くれぐれも身辺の安全にご留意なさることを願ってやみません。



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