今回は、「世界でふつうに働くために英語力より大切な39のこと」(後藤均 佐藤豪 著 日本能率協会マネジメントセンター)をご紹介します。


本書は、物語と解説を組み合わせながら、主に転職に際して重要なことを紹介していくというユニークな本です。

もちろん、就活にも大いに関わりますので、就活生の参考になることがたくさん書いてあります。


物語編は、ウィザードと名乗る転職コンサルタントが主に3人の相談に乗りながら、各人がキャリアアップしていく過程について書かれています。


登場人物は、いなほ銀行に勤務している与信監査室の上席調査役の古林彰浩。

看護師出身で日本の中小メーカーの会長秘書をしている彩田靖子。

アメリカの総合食品化学メーカーに勤務し、日本の研究開発ディレクターの熊野拓也。


そして、ウィザードのアドバイスでステップアップする訳ではありませんが、関係の深い人物である心臓血管外科医の服部宏治です。


古林と彩野は、事情があって転職を考えています。

熊野も現在の職場で悩んでいます。

服部は、年齢の関係で病院を退職します。


彼らの次なるステップアップに関する物語が、本書の最初に始まっていきます。


解説編では、(転職に限らず)次のような点に留意すべきであるということが書かれています。


オシト力を磨くことが必要であると説きます。

オシトとは、オープン・ソース・インテリジェンス、つまり公開された資料から情報を得る力を指します。

例えば、会社のサイトを見て、従業員の教育やレクリエーションの費用が少なくなっていれば、従業員に対する投資の余裕がなくなっていることがわかります。


また、外資系企業の人事部長が採用したい候補者は、①コア・コンピテンシーを複数保持している、②(転職の場合)自己の顧客をつかんでいる、③チャレンジ精神旺盛、④嘘をつかない、⑤英語が不得意でも、積極的にコミュニケートする意欲がある、の5つです。


そして、面接で必要なのはKGB(つまり、簡潔、具体的に説明し、質問に答え、ボールのラリーをやっているように会話にリズム感があること)です。


会社は、外資に買収されたり、合併してポストがなくなったり、努めていた外資が撤退したり、倒産したりと、ずっと寄りかかれる存在ではなくなっていますので、自分の力を常に磨いておく必要があります。


こだわりや職人芸、匠の力、嘘を言わない、ルールを守る・・・等々、日本人としての力は必ず外資系企業や国外でも日本人の力になります。


和の精神にこだわりすぎるのは、あまり好ましくありません。

主張すべき時は主張すべきで、タフネゴシエーションの後でフレンドリーになったりするのは、アメリカのビジネス社会では決して不思議なことではありません。


立つ鳥跡を濁さずといいますが、転職の際は去る職場で悪口を言われないようにしましょう。

外資の会社の中には、そのあたりだけでなく退職の本当の理由(実はセクハラやパワハラがあった等)を調査するところも少なくないようです。



このように、本書はユニークな構成で、ビジネスでのステップアップを図るための基本的事項を説明しています。

いささか、著者たちの主観が入ってはいますが、そもそもこのような書籍に客観性を求めるのは不可能です。

絶対視する必要は全くありませんので、気楽な気持ちで有益なアドバイスのひとつだと捕らえるべきでしょう。


就職や転職を考えている人だけでなく、ビジネスパーソンとして働いているすべての人にお勧めの一冊です。



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