今回は、「夫婦格差社会」(橘木俊詔、迫田さやか著 中公新書)をご紹介します。


最近、ノーベル経済学賞受賞者であるスティングリッツ博士の本を読んでから、貧困や格差の問題について書かれた書籍を集中的に読んでいます。


横道にそれますが、同じジャンルの本って集中的に読むと「速く読め」「内容も容易に理解できる」というメリットがあります。

読書法のひとつとして是非お試し下さい。


本書は、世帯としての最小単位というと語弊がありますが、とりあえず日本で子どもを持てる最小単位としての夫婦についての「格差」を論じています。

基本的には、個人単位よりも、子孫存続の最小単位としての「夫婦」に目を向ける試みは重要ですので一読した次第です。


「ジニ係数」「相対的貧困率」いずれもが上昇している日本では、夫婦の格差も広がっています(当然の結果でしょう)。


まず、日本で夫婦が形成される、つまり結婚する理由として「できちゃった婚」が20代女性の約4割を占めています。

昨今では、別に恥ずべきことでもありませんし、私自身の周囲にもたくさんいます。


ここで、妻の職業が、いわゆる「パワーカップル」(経済的に強い夫婦)か「ウィークカップル」(経済的に弱い夫婦)に別れる原因となります。

パワーカップルの典型例は、夫婦共に医師というものですが、ここでの違いは、妻が医師である場合は夫が医師の確率が極めて高いのに対し、夫が医師であっても必ずしも妻が医師ではないということです。


そういう意味では、女性が男性を厳しく見るという傾向があります。


ウィークカップルは、その正反対で双方学歴が低く所得も低い男女です。


未婚者に「交際相手がいない」という比率が高まっていますが、昨今多くなっている「友人等の紹介」は、女性が30歳を過ぎると急激に減少するという事実があり、そのまま非婚化に進んでしまうようです。


男性にとって厳しいのは「年収300万円の壁」で、これをクリアできないと交際相手もできないという統計データがあります。


離婚の理由として、統計データは、ある意味正直かつ残酷な原因を挙げています。

いわゆる「サーチ理論」によって、結婚後に今のパートナーよりいい相手と巡り会ってしまう。

「情報の非対称性」によって、結婚前にはわからなかった相手の事情がわかってしまう。

「不確実性」として夫がリストラされたなどの場合。


の3点が挙がっており、いかに結婚式の「誓い」がいいかげんなものであるかを物語っています。


都市と地方では、地方では「恋人のいない」確率がとても高いものの、巡り会ったらそのまま結婚に行き着く傾向が高いのに対し、都会では、「恋人がいない」確率は低いものの結婚には結び付きにくいという傾向です。



何と申しましょうか、この類いの書籍を読んでいると、いささか憂鬱になってきます。

格差は順調に(?)拡大しつつあり、相対的貧困も増加しつつあります。

そして、結婚に際しても格差が広がりつつあり、「できちゃった婚」のようなおめでたい場合(?)を除けば、非婚化・晩婚化がすすんでいきます。


私の解釈でありますが、今の日本ではシンデレラストーリーがあるだけに、女性もなかなか妥協をしません(現に、統計データを見ると医師の妻に看護師やその他低収入の女性もたくさんいます)。


ひと言で言えば、男性は収入や肩書きで差別され、女性は30歳の壁を越えてしまうと一気に厳しくなるという現状であります。


おそらく、よほどドラスティックな制度改革でもない限りこのような傾向は続き、貧困の連鎖、貧困家庭の子どもの不遇はますます進んでいくのでありましょう。


本書とは外れますが、民間企業のサラリーマンで正規社員であっても、既に「お約束違反」が横行しており、若いうちにがんばっても相応の年齢になると放り出されるという現象が生じていますし、今後ますますこのような傾向は強まるでしょう。


若者世代、子育て世代の社会保障を、政策として大きく取り上げる必要があると考えるのですが、子どもに選挙権がない以上、どうしても老人優遇に傾きがちな選挙制度・・・現状が悪化するという前提で個々人が対応していくしかないというのが現実的な選択肢でしょう。


このような流れを見ていますと「不確実性」の高い若者男性よりも、相応の資産を持った中高年男性を選ぶ女性(いわゆる「年の差婚」)が生じるのは当たり前でありましょう。


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