今回は、「家族の経済学」(橘木俊詔 木村匡子 著 NTT出版)をご紹介します。


本書は、家族を経済学的側面から観察したもので、人間が合理的に行動する(つまり自己の効用を最大化するように行動する)という前提で、統計データを用いて分析しています。


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従来は、結婚のメリットとして次のような点が考えられていた。


家庭内生産の収穫逓増性

(早い話、1人分作る労力で2人分以上作れるの費用が減少するということ)


比較優位を利用した分業

(外で働いてたくさん収入を得られる夫と家事が得意な妻が結婚すれば、比較優位の原則が働いてトータルの効用が高まる)


信用の拡張や投資活動の協調


非競合のシェア

(2人で1個で済むものが大い→購買力が約2倍に増加する)


保険機能


もっとも、最近はこのような機能が低下している。


非婚化・晩婚化の原因としては、男女とも結婚したい相手を探すというサーチ活動をすることになる。

より具体的には、女性が結婚してもいいと思える男性をサーチするのは、男性の所得格差の拡大などから困難になってきている。

女性の考える最低ラインが上昇すると同時に、「ここらで手を打つ」よりも「大当たり」をじっと待つ方が得になる。

→結婚できない男女が増える。


離婚が増加している原因として、夫の非自発的失業(リストラなど)の原因が大きい。病気や怪我よりも大きいのは、リストラされる夫には性格等の問題があるからではないか。


さらに、女性の社会進出の増加、血縁・地縁の援助や監視が少なくなった、離婚に対する負のイメージが薄らいだ、などが離婚増加の原因ともなっている。


少子化については、子ともに関する「質と量のトレードオフ」が働くことから子どもの数が少なくなる傾向がある。

つまり、子どもの質を良くするために1人の子どもにかかる教育費が高くなると、同じレベルの教育を全員に与えるとなると子どもの数は少なくならざるを得ない。


もっとも、遺伝的要素を重視する立場では、教育投資をしたからといって相応のパフォーマンスが得られるとは限らないという説もある。


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結婚、離婚、少子化に光をあてて本書を紹介してきましたが、個々人が完全な情報を持っていて合理的に行動するという経済学上の仮定と、統計データを無理矢理くっつけたような内容で、かなりの違和感を感じました。

例えば、リストラされても怪我や病気で仕事をやめても夫の収入がなくなるのは同じなのに、統計データの結果は異なります。


なぜなら、生の統計データは経済合理的な人間の行動の結果ではないからです。

もちろん、総体としてみれば人間は合理的に行動しているという反論があること(というより経済学上では主流なのかもしれません)も承知しています。


話はコロリと変わりますが、本書刊行当時の2008年ことには、3Cとか4Kという表現が主流だったのでしょうか?


女性は男性に3C(Comfoortable,Communicative、Cooperative 快適な、理解し合える、協力的な)まとめると「十分な収入があり、階層が同じかちょっと上で、家事を進んでやってくれる」を求め、

男性は女性に4K(かわいい、家庭的、賢い、(体重が)軽い)を求めるというものらしいです。

昨日ご紹介した「未来思考」にも出ていました。


私は、3Cも4Kも、知りませんでした。

一過的な現象で、長続きしなかったからかもしれませんね。


ということで、個人的にはやや期待に添わない一冊でしたが、「はじがき」には初めての試みだと書かれていたので、こういうものなのでしょう。

コスパが低いので、あまりお勧めはしません・・・(^^;)


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