拙著「話し上手はいらない」が昨日の読売新聞夕刊でご紹介いただきました!


相手を説得する際に「話がうまい」のは逆効果だと説く。話術に頼らず、木元を理解し納得しやすい環境や材料を用意する。その上で相手の決断を支えるひと言を発することが大事だという。実践のコツを弁護士の経験に基づき指南する。


と評していただきました。


元NHKアナウンサーで医師の吉田たかよし先生も雑誌「経済界」の連載で次のように書いておられます。


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人を説得するには口下手のほうが有利--そんな意外な研究結果が発表されました。発表したのは、米ミシガン大学の研究グループ。彼らは、100人の男女を対象に実験を行い、「流暢に話すよりも、言葉をつかえながら話したほうが、相手を説得しやすい」との結論を導き出しました。要するに、話し上手な人も、つかえながら話したほうが有利ということです。

 話し途中で言葉に詰まると、ほんの一瞬ですが沈黙の時間が流れます。話し手は、その間に次の言葉を考えますが、口下手な人はあせるため、ついつい本音が出ます。一方、聞き手は精神的に優位に立てるので、心にゆとりを持ちながら、話の中身を吟味できます。結果、口下手な人から説得された場合は後悔するケースが少なくなり、その経験を繰り返す中で、流暢な語り口に警戒感を強め、口下手には警戒心を緩める習慣が身に付くわけです。

 とはいえ、あまりに言葉に詰まり過ぎると、聞き手にストレスを与えるので逆効果です。実験では、言葉が途切れるのは1分間当たり4回から5回が最も説得力が増すという結果でした。目安としては、「平均より、やや口下手」といった辺りでしょうか。

 また、言いよどむ恩恵が最も大きいのは謝罪です。これは、私がNHKでアナウンサーを務めていたときに、大先輩の松平定知さんから教わった極意です。街角からの生中継では、交通を遮断するなど、近隣住民に多大な迷惑をかけます。その際、アナウンサー口調でペラペラと言い訳をした結果、かえって相手の怒りを助長することが間々ありました。そんな私に松平さんがくれたアドバイスが、「謝罪のときは言いよどむ」です。そうすることで、「この人は本当に申し訳なく思っているんだ」と実感してもらえるのです。

 ただし、単なる技巧として言いよどむのはダメです。言葉が途切れた瞬間、聞き手の脳は話し手の心理を分析します。そのため、小手先の技巧に走っても簡単に見透かされてしまうでしょう。肝心なのは、相手を説得したいと心の底から思うこと。その想いで自分の脳内を満たし、流暢に話そうとする意識を一切捨て去れば、説得力のある「最強の口下手」になれるのです。



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私は、自分自身は口下手ではないと思っています。
どちらかというと、営業経験が長いことから巧みに話せる方だと自負しています。

しかし、相手を説得したり心を動かしたりする際には、決して「話す技法」には頼りません。
従来から多くの説得の達人を観察し、文献を読んで試した結果、たどりついたのは、本書に書いた「気遣い」「共感」「動作」「第一印象」「環境」等々を整えて、相手の言い分に耳を傾けることであります。

人間は、理性では理解できても、感情を害すると決して首を縦に振ってはくれません。
きっと、あなたもそうでしょう。
わたしもそうです。

話す技術や伝え方だけに頼ると、上記の吉田先生のご指摘のようにかえって失敗してしまいます。
ある意味、「自分はどちらかといえば話し上手だ」と思っておられる方にお読みいただきたい一冊です。


読売新聞社のご担当の方、そして多くの読者のみなさまに、深く深く感謝申し上げます。

本当にありがとうございますm(_ _)m