今回は「世界「比較貧困学」入門(」石井光太著 PHP新書)をご紹介します。


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本書では、世界の「絶対的貧困」を1日2.5ドル以下の暮らしとし(世界銀行の指標)、「相対的貧困」を「等価可処分所得」が全人口の中央値の半数未満の世帯員と示している。
日本の場合は、単身所得が年間約150万円以下である人々が相対的貧困ということになり、国民の約16%にあたる。
ちなみに、日本は他の先進国に比べて相対的貧困率が高く、先進国の中ではイスラエル、アメリカについで3番目、つまり世界第3位の相対的貧困国ということになる。


以下、絶対的貧困国と日本の実情を主要なポイントに光を当てて比較する。


(住居)


絶対的貧困国ではスラムでコミュニティーを作って生活している。


それに対し、日本では各地域に貧富が入り交じる住宅状況で「恥ずかしい」という気持ちからコミュニティーが作られない。また、貧困家庭の住居スペースは狭くDVや児童虐待が起こりやすい。


(路上生活)

絶対貧困国では、家族みんなで路上生活をしている。


それに対し、日本のホームレスは、社会的偏見と本人の劣等感という2つの要素から孤立しがちだ。


(教育)


絶対的貧困国ではそもそも最低限度の教育を受けられない人々が多い。


日本では、義務教育制度のおかげで公立学校で最低限度の教育を受けることが出来るが、貧困層とそうでない層が混在するため、劣等感と不平等感にさいなまれる貧困層の子どもたちが多い。


(労働)


絶対的貧困国では労働は危険と隣り合わせだが、少しでもいい仕事に就こうという希望があり、出稼ぎも多い。


日本では、最低限度の仕事はあるものの、貧困層が大きく飛躍する可能性は皆無で「夢を失った」人々が多い。
心の病を患う人も少なくなく、貧困の世代間連鎖が生じやすい。


(結婚)


絶対的貧困国では、貧困層同士で早婚になるケースが多い。


日本では、貧困層同士だとそもそも結婚を諦めてしまったり、結婚しても子どもを養っていく余裕がないため子どもの数が少なくなっている。
もっとも、絶対的貧困国と異なり、日本では住む地域や仕事が混在しているので、結婚をきっかけにして貧困層から脱出できるケースも少なくない。


(犯罪)


絶対的貧困国では、生きていくための必要悪として犯罪が行われる。


日本では、特に貧困層の孤独老人たちは、刑務所の中のほうが”より人間らしい生活”が送れるという理由で、犯罪と刑務所の往復を繰り返すケースが少なくない。


(医療)


絶対的貧困国では、病気にかかっても治療を受けることが出来ない。

日本では、貧困層は人間関係がうまくいっていない人々が多く、病院にかかって周囲の人たちに迷惑をかけたくないという気持ちから敢えて治療を拒否することがある。
また、孤立化が進んでいるため、親族の中には、ブランドバッグを持ちながら「お金の余裕がない」と言ったり「なんで私が払わなければならないのよ」と患者の目の前で愚痴る人が増えてきている。


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少子化が急激に進行し貧富の差が拡大しつつある日本では、本書で書かれた日本の貧困層は近い将来急激に増大すると予想されます。


孤立してコミュニティーを形成することも出来ず、医療も満足に受けられない貧困老人層が急増しても、国家債務が桁外れに多い現状では公的援助の拡大は期待できません。

また、子どもが貧困層に入ってしまうと、今日の韓国のように親の世話をするどころか足手まといとなり、老人の自殺が増加する怖れもあります。


いつ、このような事態が自分の身に降りかかってくるかわからないというのが現実です。


考えられる処方箋としては、貧富の格差を縮小するための税制や強大な力をもっている大企業等への優遇措置の撤廃という政策ですが、アメリカを模倣し過ぎている今日のアベノミクスは、かえって格差の拡大の方向にすすんでいると考えます。

社会全体の効用最大化を目指す政策が望まれるところでしょう。


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宣伝です。恐縮です。

貧困に陥らないため、また貧困から脱出するためには個人的スキル向上が必須です。

今日の日本のビジネスパーソンに最も欠けているコミュニケーションスキルを飛躍的に高める目的で書きました。


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何卒、よろしくお願い申し上げますm(_ _)m