今回は、「フリーエージェント社会の到来」(ダニエル・ピンク著 ダイヤモンド社)をご紹介します。


本書は、2002年4月に邦訳されたものの新装版で、相変わらず著者の未来を見る目の鋭さを感じさせます。


本書執筆当時のアメリカでは、既に組織人の時代は終わりを告げようとしていました。

産業革命によって仕事の場が家庭から会社や工場に通うようになり、今日の組織人という職業形態が一般化したのですが、アメリカの労働人口の4分の1はフリーエージェントとなっており、その人口は製造業就労者や公務員の数を軽く上回るほどになっています。


このように、フリーエージェントが増加した背景には次のような事情があります。


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技術革新が進んだことから、会社の寿命が極端に短くなり、新卒から定年までひとつの会社で勤め続けることが現実的に困難になってきたこと。


組織の中で自由な発言さえも奪われて不満を感じている組織人が増加したこと。


IT革命によって、パソコンさえあれば家庭で仕事ができるようになったこと。


ひとつの組織で働くことはリスクが高く、自分のスキルを多様な組織に売る方がリスク分散になる。


(当時の)アメリカの組織人たちは、過労死という言葉がある日本よりも長時間拘束されており、子どもたちと接する機会も少なく、人生のプライオリティーという見地からフリーエージェントになる組織人が増加した。


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このような背景によって急増したフリーエージェントの労働倫理は、「自由」「自分らしさ」「責任」「自分なりの成功」の4つの要素です

フリーエージェントは仕事と家庭の再統合(ブレンド)を実現しており、ワーク・ライフ・バランスよりはるかに進んだ形態だといわれています。


今後は、ハリウッドの映画製作のように、ひとつの企画を立てて、専門のフリーエージェントたちを集め、仕事が終わったら解散するという形態が増加するでしょう。


フリーエージェントたちが働くためのインフラストラクチャーもどんどん生まれています。

彼らは、コピー店、コーヒーショップ、書店、大型オフィス用品店等々・・・に集まって、雑談をしたり情報交換、新規事業などの話をしています。

(このような場所を「フリーエージェントの山小屋」といい、集中して仕事をする家庭のオフィスのような「プライベート・アイダボ」の2種類です。


フリーエージェントのための仲介業者やコーチも新しい仕事として着目されています。

フリーエージェント同士の人間関係は「タテ」を重視する男性よりも、「ヨコ」を重視する女性に向いているでしょう。


組織人育成のための従来からの学校での教育も変化し、将来的には家庭学習が主流になるでしょう。



以前、同じ著者であるダニエル・ピンクの「ハイコンセプト」をご紹介しましたが、どうやら著者の考えに時代が追いつくまでは相当のタイムラグがあり、今回ご紹介した「フリーエージェント社会の到来」も、新装版が発売されています。


本書でも書かれていますが、正社員と非正規社員の待遇差は厳しいものがあり、臨時社員をテンプ・スレーブ(臨時の奴隷)と称しています。

まさに、昨今の日本と状況が酷似しています。

その分、正社員の残業やサービス残業が増加して、家庭崩壊に至っている点も(当時の)アメリカ人の長時間労働に鑑みれば容易に想像が付きます。


もっとも、著者は、組織がすべてなくなってしまうというような過激なことを述べているのではなく、将来的には大組織と多くのフリーエージェントたちで構成された社会になっていくと予言しています。


いずれにしても、組織外でも十分通用する尖ったスキルを身に付けることが、わたしたちの将来にとって重要なことは言うまでもありません。


現代社会を生きるすべての人必読ともいえる一冊です。


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