今日は金曜日ですし、近刊著「話し上手はいらない」から面白いお話しを少し引用しましょう。


NHKで放送していた行動経済学の講義を担当したダン・アリエリー教授が、デューク大学で行った実験です。


バスケットボールの大試合のチケットが買い手殺到のため抽選で販売することになりました。

アメリカでは、バスケットボールはアメリカンフットボールに次いで人気のあるスポーツです。


抽選に当たった学生に

「いくら支払ったらチケットを譲ってもらえるか?」

と尋ね、はずれた学生に、

「チケットを買うとしたらいくらまで出せるか?」

を尋ねたそうです。


当たった学生は「最低でも2400ドル」と答え、外れた学生は「せいぜい170ドル」と答えたそうです。

な、何とそのひらきは、10数倍以上で、到底交渉の余地はありませんよね。


同じような実験は、影響力の武器の著者であるチェルディ―二氏も行っており、

「人は、一度手に入れた物を手放したくなくなるという傾向がある」

として、これを「保有効果」と名付けました。


早い話、一度ゲットしてしまうと手放したくないのが人間の性(さが)なのです。


週末なので、ビジネスの例は省きましょう。


この「保有効果」、どうやら人間は異性に対しても感じてしまうのです。


これがややこしくなるのが、不倫です。


「ちょっと浮気」のつもりで付き合った彼(彼女)。

楽しい時間を一緒に過ごしていくうちに、あなたの心には「保有効果」が働いてしまいます。


理性的に考えれば、不倫関係を早く精算しないとややこしいことになるとわかっていても、ズルズルお付き合いが深まるにつれ、手放したくなくなります。

別れようとすると、彼(彼女)との楽しかりし日々が次々と蘇ってきて、別れるのがとても辛くなってしまうのです。


私が担当した案件でも、妻が小さな子どもの先天的な病気治療の関係で頻繁に遠方の病院(妻の実家の近くでした)に通っては、家を空けざるを得ない夫婦がいました。


相談に来たのは夫です。


夫には、実は、結婚前から付き合っていた会社の元部下の女性がいました。

妻が家を空けている間に、焼けぼっくいに火がついて、夫と彼女は再び付き合いをはじめました。


彼としては、離婚するつもりは毛頭ありません。

かといって、彼女と別れるつもりもありません。


「離婚するつもりがなく奥さんとお子さんの生活を守りたいのなら、バレないうちに彼女と別れることを強くお勧めします。彼女にだって大切な人生があるのですから、もうとっくに潮時を過ぎてすよ」

と私が説得しましたが、彼は、

「私には、妻子とも彼女とも別れることはできません。両方を幸せにしたいのです」

などという自分勝手なことを言うばかりでした。


しかも、彼は不倫相手の彼女に、

「今、妻子はほとんど実家に帰ったきりで実質的に別居している。離婚が成立するまで待ってくれ」

などとデタラメを言って、ズルズル引きずっているのです。


彼女としても、10数年以上も付き合った彼に対して「保有効果」が働き、何度も別れようと決心したようですが、別れを切り出すと彼との楽しかりし日々が次々と蘇ってきては、彼に説得されてしまっていたようです。

(彼女から何度か別れ話があったこと、それを彼(夫)が説得したということを聴いて。私がそのように思いました)


「こうなると、あなたの人生に関わる決断の問題です。どうしろとは私に言う権利はありません。不倫がバレたり、彼女が別れる決断をして何らかの要求をされたりして困った状態になったら、またいらして下さい」

私は、こう言って夫を帰しました。


別れようと決意しても、楽しかりし日々が蘇ってきて邪魔をする。


そんな経験、あなたにもあるのではないでしょうか、もしくは、今現在悩んでいるのではないでしょうか?

別れる別れないは、あなたご自身で決めて下さい。

人生の大転機ですから・・・。


なお、この話は今日のブログだけで、拙著では別の例をご紹介してます。


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