今回も、近刊著「話し上手はいらない」に収録したことに関して書きます。

「しつこい」と思われるかもしれませんが、何卒ご容赦下さい。


私も、約2年のブランクの後にようやく力を入れて書いた本ですので、本書には私がこの業界での生き残れるかどうかがかかっているのですよ~マジで。

もちろん、内容には絶対の自信がありますが、内容だけで売れるほど甘くないのが昨今の業界事情なのです。



という事情とささやかな愚痴はさておいて、さっそく内容に入ります。


あなたが、少し熱があって喉が痛くて鼻水も出て困ったとしましょう。

明日は大事な仕事が入っているので、内科医院に行きました。


医師があなたの症状を問診で尋ね、喉を検査して肺の音を聴くなどしてから、

「インフルエンザではないですね。単なる風邪でしょう。薬を出しておきますから、消化のいい物を食べてゆっくり休んで下さい」

とあなたに指示して、あなたは窓口でお金を払って処方箋を出してもらい、薬局で薬を買って帰ります。


処方された薬を飲んで、体を休め、夕食には消化のいいうどんでも食べて早めに寝ます。


冬にはよくある光景ですよね。


おそらく、あなたは医師の診断を信じて、処方された薬を指示通りに飲むことでしょう。

少しも疑うことなく。


これが、もし医師ではなく、医学とは縁のないあなたの友人が、あなたの症状を聴いて、買ってきた市販薬を飲めと言われたら、あなたは素直に従うでしょうか?


少なくとも、医師の指示の時のように、疑うことなく素直に従うということはないでしょう。


人間誰しも同じです。


こういうのを専門家バイアスといいます。


専門家のいうことに素直に従ってしまう傾向は、どこの国の人間でも(程度の差はあっても)必ずあるのです。


専門家に見えるだけで信頼してしまうこともあります。


病院の中で白衣を着た中年の男性を見れば、おそらくあなたはその病院の医師と思うでしょう。

少なくとも、放射線技師などの医療従事者と思うはずです。


待合室で待っているあなたに近寄ってきて、

「鈴木さんですね。あちらの第3診察室に来て下さい。事前に問診を行います」

と言われれば、あなたは素直に指示に従うでしょう。


もしも、白衣を着た男性が、病院とも医療とも全く無関係な興信所の調査員で、あなたの情報を得る目的で問診もどきの質問をしようとしてたとしても・・・。


このように、私たち人間は専門家に極めて弱いのです。


私自身、弁護士として法律相談を受けていると、よく

「先生。私はどうしたらいいのでしょう?」

と、その人の人生に関わることまで尋ねられます。


もちろん、そのような時は、

「私は、単なる法律の専門家であって法律屋に過ぎません。あなた自身の人生を左右するような判断を下せる立場では決してありませんので何卒ご容赦下さい」

と言って逃げていましたし、一介の弁護士としてはそうすべきだと思っています。


話が逸れましたが、あなたが仕事で相手を説得する際に、「虎の威を借りる」がごとく、専門家の意見書や論文等を使うと効果的です。


大企業の中には、業界のほとんどの人が知っているような有名大学の教授や科学者に「意見書」を書いてもらって、営業担当者に配布して説得材料に使っているところもあります。

営業担当者は、相手に意見書のコピー等を見せて、

「かの有名な○○先生も、このように弊社の製品の強度を認めて下さってます」

と言えば、相手に与えるインパクトは絶大でしょう。


そこまでできなくとも、自社製品や自社のサービスを評価した業界誌などを見せて、

「権威ある業界誌でも、このように評価されています」

と言って、業界誌のコピーを示すのと、全くの手ぶらとでは大きな違いがあります。


よく、怪しげな健康食品のパンフレットに、医学博士××先生推薦、などと書かれているのも、専門家効果を狙っているのです。


このように、相手を説得する際には、百の言葉を尽くすより、1枚の専門家の意見書や業界誌のコピーの方がはるかに効果があるのです。


異性を食事に誘う場合でも、どんなに巧みな言葉を使うより、信頼できる情報誌を見せて、

「この店、最高の三つ星評価になっているんだ。試しに行ってみない」

と誘った方がはるかに効果的です。


もちろん、あなたと2人で食事をすることに抵抗のない相手であることが前提です。

相手があなたと2人で食事をしたくなければ、どんなオファーでも断られるのが普通ですから、潔くあきらめましょう。


このように、人間を説得する際に専門家効果を用いるとその効果は想像以上に大きいのです。

是非、試してみて下さいね。



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