本日は、「行動経済学」(大垣昌夫・田中沙織 著 有斐閣)をご紹介します。


おそらく、本書は経済学の最先端について解説した本のひとつでしょう。


4部構成の11章からなっていますが、各章のページ数は少ないので大部の本ではありません。


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第1部 行動経済学とは何か?


従来の経済学が合理的人間をモデルにするのに対して、行動経済学では人間は必ずしも合理的にこうどうするものではないというイントロ部分。


神経経済学という新しい分野のイントロ部分。



第2部 プロスペクト理論と経済行動


不確実性下の経済行動について、リスクに対する選好と効用関数の形状、危機回避の測定、アレのパラドックス、絶対的危機回避選度の性質、相対的危機回避選度の性質などについて述べられた後、プロスペクト理論一般、限定合理性(フレーミング理論など)一般について。



第3部 時間取引と社会的選好


フィッシャーの無差別曲線、指数割引モデル、双曲割引モデル、時間選好に関わる脳機構。

学習理論と神経経済学の実績、社会的選好、などなど。



第4部 行動経済学のフロンティア


文化経済学、規範とアイデンディテイ経済学、幸福の経済学、規範行動経済学、などなど。


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このように、内容があまりにも盛りだくさんで、項目を(しかもかなり省略して)挙げただけでも以上のようになってしまいます。


その中に、神経経済学(脳科学を用いた経済理論)、文化経済学、幸福の経済学などのように、新しい概念が説かれており、ものすごく凝縮された一冊です。


はっきり申し上げて、本書をしっかり読み込めるのは経済学の学力が相当程度ある人に限るでしょう(もっとも、大学の学生用にも用いるそうですが)。


本書は、大雑把に読んでいって、行動経済学のみならず、神経経済学や文化経済学、幸福の経済学のような新しい分野が生まれており、従来の経済学と、どのような位置づけになっているかを知るだけで、値段以上の意味があると言えます。


そういう意味で、新しい分野の経済学はいったい何をやっているのか、ということを知ってみたい方には是非ともお勧めの一冊です。

実際、私の脳のMRI写真のようなものが用いられている部分を見たときは、最近の経済学者はこういう分野まで研究しているのか、と驚きました。


行動経済学 -- 伝統的経済学との統合による新しい経済学を目指して/有斐閣
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