本日は、「裁判員」(小杉健治著 日本放送出版協会)をご紹介します。



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母と娘が殺害された事件で、木原太一郎という容疑者が逮捕され、起訴されたて裁判にかけられることになった。

殺人罪で裁判員裁判が開かれたが、被告人は「自分はやっていない」と無罪を主張する。


主人公の堀川恭平は本事件の裁判員に就任したが、まさに被告人を死刑にするか無罪にするかという大きな判断を委ねられた重圧に押しつぶされそうになる。

審理がすすんでいき、検察官は、被告人と殺された娘の留美子がメル友として知り合い被告人が留美子に金銭を貢いでいたにもかかわらず結婚を拒否されて激昂し、留美子とその母を殺害したと主張する。

弁護人と被告人は、被告人が被害者宅に行ったときには既に被害者らは殺害されており、被告人は無罪であると主張する。


裁判官と裁判員の評議が重ねられ、堀川らの反対にもかかわらず死刑判決が下される。

その後、被告人が拘置所で自らの無罪を主張して自殺を図り重体になる。


沈痛な思いで、堀川は被告人の無罪を証明すべく真犯人を捜そうと試みていた時、有罪を主張した裁判員の一人が自殺か事故か不明ながら命を落とす。

さらに、もう一人の裁判員も殺害されるという事態が発生。


堀川と同じく被告人の無罪を信じていた古池美保は、自分たちの安否を心配しつつも、事実解明のために奔走したところ・・・。


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本書は、主人公が妻と離婚の瀬戸際であるにもかかわらず、裁判員に就任し、裁判員の立場から刑事裁判に参加して評議を行い、死刑判決の下った被告人の無実を晴らそうと奔走する物語です。


裁判員の判決に対する心の重圧、そしてそれが間違っていたのではないかと思った時のおのおのの裁判員の心痛を見事に描ききっています。


若干古い本ではありますが、誰もがいつ裁判員になるかわからない現代の日本において、一読しておく価値のある一冊だと考えてご紹介した次第です。

一気に読めてしまいますが、極めて感慨深い物語ですので、是非ご一読をお勧めします。


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