本日は、「若者は本当にお金がないのか?」(久我尚子著 光文社新書)をご紹介します。


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未婚者の20代の若者は、過去の若者や30代以上の人たちに比べて、生活満足度が実はとても高い。

可処分所得が多く、自由に使える時間がたくさんあることが原因だろう。

驚くべきことに、バブル期の89年より09年のほうが、可処分所得も現在貯蓄高も多い。


男性の25歳以上では、家族世帯の大人より多くのお金を手にしており、20~24歳でも若い家族世帯の大人より多くのお金を手にしている。


正規雇用が多いバブル世代の若者より、現在の非正規雇用の若者の方が、実際には多くのお金を手にしている層が多い。


消費に関していえば、若者の住居費が増加している。

また、外食を減らし、家で料理をする傾向が見られるようになっている。

食事やアルコールも「イエナカ」が充実しており、「外飲み」は前年代層にわたって減少している。


将来不安や雇用不安が高くなっているため、今の若者は手元のお金や余暇時間はあるものの、経済的余裕や時間的余裕があるとは感じていない。


日本では、未婚化、晩婚化が進行しているが、若者の大半は結婚を望んでいるし、結婚の先延ばし意識も薄らいでいる。さらに、家族を持つことの価値意識も高まっている。


男性では結婚資金の不足が、女性では仕事が、それぞれ未婚にとどまる理由の特徴としてあげられる。


若年未婚男性の6割は日常生活を男同士のみで、女性の半数は女同士のみで過ごしている。

交際相手のいない者のうち、約半数はそもそも交際を望んでおらず、その傾向は20歳前後の若い層で強い。


異性との交際に若者が消極的な理由として、大雑把に言えば、男性は恋愛方法がわからない、女性は興味が薄れているということになる。


結婚には年収300万円の壁があり、300万円を超えると一気に既婚率が上昇する。


今日の日本では、正規雇用であっても年収カーブは低下しており、若者がたとえ正規雇用であったとしても、ひと昔前のように将来の経済状況について明るい見通しを持ちにくい。


就職については、国内志向や安定志向が強く、就職人気ランキングには大手生保、損保、銀行など、国内の伝統的な金融機関がずらっと並ぶ。


終身雇用を志向する若者が多く、スペシャリストよりジェネラリストを目指す意識が強まっている。


若者の海外志向は二極化している。


社内の「飲みニュケーション」は嫌いではなく、周囲との和を重視している。


若者が保守的な考え方をするようになった背景には、日本経済の低迷がある。若者の価値観や志向は、中高年世代がけん引してきた社会環境の影響が大きい。


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本書は、著者の主観ではなく、統計データを示しながらそれを読み説いていくという形で書かれており、ふんだんに統計データが盛り込まれています。

統計学の活用例の本と言っても決して間違いではないと思われるくらいです。


このように、統計データを読み説いていくと、今の若者が貧乏だという説は排除され、お金にも時間にも余裕のある満足度の高い生活をしていることがわかります。

しかしながら、将来不安は大きく、非婚化、晩婚化が進んでいるのも事実です。


私が個人的にとても驚いたのは、将来不安があるにもかかわらず、旧来型大企業志向で和を尊んで終身雇用に就きたいということです。

自分たちは生命保険に加入しないのに、就職ランキングで日本生命がトップという、合成の誤謬が見事に生じているのには驚かされました。


私は、幸か不幸かサラリーマンを20代で辞めてしまったので、「最近の若い連中は・・・」と愚痴る気持ちもなければ資格もありません。

ただ、破綻した旧長銀に一度身を置いた立場としては、定年まで安泰な企業はありませんよ、ということくらいでしょうか・・・(^^;)


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