職場の人間関係って多くの人の悩みの種ですよね。


職場の人間観関係がうまくいかないと、1日の大部分の時間を不愉快な気持ちで過ごさなければならなくなります。


人間関係といってもいろいろありますから、一朝一夕に解消させる魔法のような方法はありません。


ただ、間違いなく、自分を取り巻く職場の人間関係を良くする方法があります。


見返りを期待せずに、どんどん恩を売ることです。


忙しそうにしている人に「手伝いましょうか」と声をかける。

重そうな書類を持っている人にさりげなく手助けをする。

外回りの営業マンに新規訪問先の地図のコピーを取っておいてあげる。


などなど、男女を問わず「気が利く人」になれれば、助けてもらった人は恩を感じます。

以前も書きましたが、人間心理には、受けた恩をお返ししなければならないという「報恩性の原則」が働きますので、いつかお返しをしてくれることがあるかもしれません。


「あるかもしれません」という表現を用いたのは、この「報恩性の原則」が次のように時間と共に効果が薄れてしまうからです。


何かをしてあげた方が忘れるよりもずっと早く、してもらった方は恩を忘れてしまうのです。

まさに「恐るべき忘恩の行為」ですね(バルザック「ざくろ屋敷」より)。


アメリカの心理学者の中には、相手が恩を忘れてしまった場合は、さりげなく思い出させるのがよいと説く人もいますが、私はその考えには反対です。

言い方一つ間違えると、「なんて恩着せがましい人なんだろう」と、かえって反感を持たれてしまう恐れがあるからです。


見返りを期待せず、相手に喜んでもらえれば自分も嬉しいというくらいの気持ちで、どんどん恩を売りましょう。


女性だったら、だらしない男性社員の机の上をササッとふいてあげるだけでも単純な男たちは感激するものです。


10人程度の部下を持つ中間管理職の方でしたら、部下の誕生日にさりげなく日頃の感謝を込めたメッセージを添えた贈り物を机の上に置いておくのもいいでしょう。

留意すべきことは、「さりげなさ」と、さほど高価な贈り物を贈らないことです。

贈り物としては、携帯ストラップや小さなキャラクター付きのキーホルダーなどが好ましいでしょう。

メッセージだけでも十分な効果があると思います。


私の顧問先だった会社のやり手社長は、自分を模したキャラクターキーホルダーやシールをつくっていました。社員に感謝の意を示すときなどにあげていたのでしょう。

その効果かどうかはわかりませんが、その会社の社員の忠誠心と働くモチベーションは極めて高く、常に好業績を維持していました。


このように、普段身に付けている物だと、それを見る度に「そういえば、これは誕生日に課長にもらったんだ」と思い出してくれる効果があり、忘恩防止対策にもなります。


余談ですが、誕生日というのは、本人にとっては極めて重要な日であるのに対して、他人から見れば普通の日なのです。

このギャップはかなり大きいものと私は踏んでいます。


ですから、たいしたことをしなくとも(例えばメッセージだけでも)、誕生祝いは誕生日を迎えた本人にとっては感慨深いものになります。


管理職ですから部下の誕生日を知っているのは当たり前のことですし、他の部下に余計な気をつかわせない程度にしておけば、思った以上に効果があるものです。

当然のことですが、部下を男女差別してはいけません。

女性の部下にだけプレゼントしたりすると、下手をするとセクハラおじさん扱いされかねませんから。


余談ながら、私が平社員だったときの経験ですが、ケチな上司が意外に多いのには驚かされました。


旧長銀から野村投信に転職して出社初日、某役員に昼食に誘われました。

食後、会計の段になって「割り勘」だったのには、かなりの衝撃を受けました。


退職前、旧長銀を退職する意向を上司に伝えたら、

「今夜、空けておいてくれ。しっかり話しを聴こう」

ということで夕食をお供したのですが、これまた割り勘でした。


これは人生観の違いなのでしょうか(少し大げさですが)?


少なくとも、私は後輩や年下の女性社員などと食事を一緒にする機会があれば、全額自分が払っていました。

同年代やそれに類する関係の場合は「割り勘」が多いですが・・・。


中高年社員の間で、昨今話題になった新入社員の言動がありましたよね。


出席を義務づけられた「飲み会」への参加を促したとき、新入社員が「残業代は出るのでしょうか?」と尋ねたことに呆れ果てたという事件です。


私も最初はいささか違和感を感じましたが、彼の言い分も決しておかしなことではないと思うようになりました。


職務命令で「飲み会」に出席を義務づけられ、上司の独演会を聴かされ、気をつかってお酌に回る・・・。

これは決して楽しいことじゃありませんし、その時間が自由に過ごせれば自分にとってはるかに有益なことができたはずです。

気をつかって味わうこともできない食事をするくらいなら、ファストフードで一人食べた方がよっぽどマシでしょう。


ずいぶん横道に逸れてしまいました。


要は、職場で誰かを説得しなければならない状況になったとき、普段どれだけ恩を売っているかによって大きな違いが出ることが(かなりの確率で)あるということです。


「見返りを気にするな!与えて、与えて、与えまくれ!」

というのが人間関係の達人の言葉の中にあります。


見返りを期待することなく、恩を売りまくりましょう。

自然にそれができるようになれば、あなたの職場での人間関係の悩みの多くはなくなってしまうはずです。


もちろん、職場内での説得は、はるかに容易になるはずです。