本日は、「豆の上で眠る」(湊かなえ著 新潮社)をご紹介します。


主人公の結衣子は、幼いころ姉の万佑子に対して劣等感を抱きながらも、万佑子が大好きで、たくさんの本を読み聞かせてもらった。


その中で、二人にはどうしても理解できない本があった。

アンデルセン童話の「えんどうまめの上にねたおひめさま」だった。

王子さまは「本当のお姫さま」と結婚したいと願ってたが、なかなか見つけることができない。

ある嵐の夜、ボロボロの身なりの少女がお城にやってきて、自分がお姫さまだという。

お后さまは、確かめるために、ベッドの上に一粒のえんどう豆を置き、その上に羽布団を何枚も敷いて、少女を一晩寝かせる。

翌朝、お后さまが少女に、よく眠れましたか、と尋ねる。

少女が、布団の下に何か硬いものがあったのでよく眠れませんでした、と答える。

お后さまは、そんなに感じやすいのは「本当のお姫さま」の証拠だと確信し、王子さまとお姫さまはめでたく結婚する。

結衣子と万佑子は、ビー玉と布団で実験するなどして試してみた。


この記憶が当時2歳上の姉万佑子の強烈な思い出として、大学生になった結衣子の頭の中に残っていた。

母が胃潰瘍の手術をすることになって郷里に帰った結衣子は、昔のことを回想する。


小学生の時、行方不明になった万佑子が、2年後に奇跡的に見つかったが、結衣子は戻ってきたのは本物の万佑子ではないと疑い続ける。

万佑子は、ビー玉と布団で実験したことも自分で口にするし、DNA鑑定でも間違いはなかった。


しかし、戻ってきた姉を本物の万佑子ではないと疑い続けてきた結衣子は、郷里に帰ってもその思いを払拭できないでいた。

そして・・・驚くべき事実が明らかになる。



本書は、「告白」で有名な湊かなえさんの最新作です。


母からひいきにされているような姉の万佑子に対して劣等感を持ちつつも、楽しく過ごした幼い頃の結衣子の気持ちが、冒頭部分でよく表現されています。

また、家族が行方不明になった家庭に対する世間の接し方がリアルに描写され、被害者家族を題材にした「虚ろな十字架」(東野圭吾著)同様、その身になって初めて分かる苦しみや辛さが実感できます。


誰もが予想できないような衝撃的な結末だけが、やや無理があり分量的にも少なく説得力が欠けていたように私には感じました。


とはいうものの、犯罪被害者家族の苦しみや世間からの風当たりについての描写には著者独特のものがあり、読み応えとしては十分でした。

文章が上手く、すらすらと読み進めていけてストレスを感じさせないのも著者の持ち味なのでしょう。

著者の作品の中では秀作のひとつと考えて間違いありません。

湊かなえファン必読の一冊です。


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