本日は、「説得を後押しする決めの一言」についてご説明したいと思います。
今は少なくなったかも知れませんが、昔はコピー機の前でよく列ができたものでした。
特に、試験前になると大学生協のコピー機には長蛇の列ができたものです。
まったくの余談になりますが、学生諸君が本ブログを読んでいたとしたら、肝に銘じておいていただきたいことがあります。
「他人のノートをコピーしただけで、なんだか大丈夫という気持ちになりがちですが、それは完全な間違いだということです」
学生時代のことでした。
同級生5人くらいで下北沢のコピー店で各科目のコピーをとっていました。
それを見ていた経営者らしき人が、
「コピーが出来たからといって安心しちゃダメだよ。ちゃんと読むんだよ」
と私たちの声をかけてくれました。
コピーが出来上がり、2階にあった店から狭い階段を下りて晴天の歩道に降りたときです。
ある同級生が、
「これで全部コピーが揃った。とてもめでたいからみんなで飲みに行こう」
と楽しそうに声を上げたのです。
結局・・・私も含めて全員が飲みに行ってしまいました。
勉強から逃れたいという潜在意識の働きと、周囲のみんなと同じ行動をしてしまう社会的認識の理論が働いたのでしょう。
試験前日になって、ものすごく後悔したことは言うまでもありません。
話を戻しましょう。
たとえば、会社のコピー機の前に列が出来ていたとします。
コピー機を使おうとしている人に向かって
「すみません。5枚だけなのです。先にコピーをとらせて下さい」
と言ったところ、60%の人が面識のない相手に順番を譲ってくれました。
ところが、このお願いの後に、
「とても急いでいるものですから」
という理由を加えると、ほぼ全員が順番を譲ってくれました。
これを「なぜなら効果」と呼んでみましょう。
「なぜなら効果」が強力なことを試すために、
「コピーを先に使わせてくれませんか。コピーをとる必要があるものですから」
と頼んだところ、なんと93%の人が譲ってくれたそうです。
よく考えれば不思議なことですよね~。
みんなが、コピーをとる必要があるから並んでいるのですから。
人は、小さな問題であるときは、問題を真剣に考えずに心理的に手っ取り早くて楽な判断を下してしまう傾向があるということです。
以前にご説明した「ヒューリステックス」(判断までの近道)のひとつだと考えていただければ結構です。
もちろん、コピー枚数が5枚ではなく20枚だったときは、「なぜなら効果」はほとんど機能しなかったそうです。
もっとも、納得できる理由があれば「なぜなら効果」は絶大な威力を発揮するということが実験の結果判明しています。
もし、同僚の協力が必要なときなどには、必ず理由を付けることを忘れないで下さい。
「なあ、山田君、悪いけどこの仕事手伝ってくれないかな?明日の朝一で提出しなきゃならないんだ」
という具合です。
また、長年取引を続けていると、取引相手はあなたの会社との取引に慣れてしまって、取引を継続する理由が曖昧になったり、忘れてしまう場合があります。
そういうときは要注意です。
ライバル会社が、隙をついて割り込んでくる恐れがあるからです。
そういうことにならないためにあなたのやるべきことは、相手の決定権者にあなたの会社と取引する「理由を考えてもらう」のが効果的です。
「御社と弊社が取引を始めたきっかけは、え~と、どういうことからでしたっけ?」
「確か、以前、御社の納期が突然変更になったことがありましたよね~」
というふうに水を向ければ、きっと思い出してくれるはずです(挙げた例は、若干露骨ですので、臨機応変に変えてみて下さいね)。
相手に、あなたの会社と継続取引している理由を再認識してもらえば、取引先との信頼関係が強化されること請け合いです。