前回までは、効果的な説得のステップについてご説明しました。


今回からは、かの名著「影響力の武器」の著者、ロバート・B・テルディー二が説いた説得の心理学を参考にして、個々にご説明していきたいと思います。


まず、相手を説得するための要件として「相手に好意を示す」ことが必要です。

これは「友好関係を築く」と言い換えることもできます。


相手を説得して何らかの意思決定をさせるためには、相手との間に友好関係が築かれていることが必須要件になります。


なんら友好関係にない人物から説得されても、多くの人はそれに従おうとは思いません。


よく耳にしませんか?


「・・・を買いに行ったのだけど、店員の態度が気に入らなかったから買わなかった」

「職場にA社の社員が営業に来たけど、どうもあの営業マンが好きになれな買ったので、断ってしまったよ」


逆に、

「あそこの店員さんがとっても感じがよかったので、余分に買っちゃった」

「担当者が感じのいい人だったので、とりあえず一度だけ試しに取引してみることにしたよ」


というような言葉を。


初対面で「感じがいい」という印象を与えられたのは、とりもなおさず相手方との間に「友好関係」が築かれたということです。


もし、後者の例のように「態度が気に入らなかった」「好きになれなかった」というネガティブなイメージまでは与えなかったとしましょう。

つまり、相手が普通の態度で何の印象も与えなかったような場合、あなたならそのような人の説得に応じるでしょうか?


最初から、ハンバーガーを買おうと思ってマクドナルドに行ったとしたら、店員の態度が無印象であっても、あなたはハンバーガーを買って帰ることでしょう。

なぜなら、あなたは、買いに出る前から「ハンバーガーを買う」という意思決定をしているからです。


このように、最初から意思決定をしている相手であれば、そもそも説得など必要ありません。

せいぜい、悪い印象を与えないようにして、相手の意思決定が覆らないように気を配ればいいだけです。


しかし、私が本ブログで説いている「説得」というものは、説得によって相手に意思決定を促すものなのです。

相手の心の状態をそのままにするだけでなく、あなたに好ましい方向に動かす必要があるのです。

相手をして、あなたにとって望ましい方向に意思決定させる必要があります。


そのためには、相手に与える印象が「無印象」であっては不可能です。

何らかのポジティブな印象を与える必要があるのです。


「友好関係」を築くというのは、とりもなおさず相手をしてあなたにポジティブなな印象を与えることに他ありません。


では、相手にポジティブな印象を与えるためにはどうすればいいのでしょうか?


最低限、「相手との共通点をアピールすること」と「相手方を称賛すること」の2つが必要です。


相手との共通点をアピールすることの意味と効果は、すでに経験されている方も少なくないと思います。

年齢が同じ、趣味が同じ、出身地が同じ、出身校が同じ・・・等々、共通点が多ければ多いほど、ただそれだけで、ポジティブな印象を与える大きな要素となります。


例えば、私は三重県伊勢市の出身ですが、営業担当者と以下のような会話がなされたとしましょう。


「ところで、荘司さんはどの県ご出身ですか?」

「三重県です。もっと細かく言えば伊勢市出身です」

「ええ!私も三重県伊勢出身なのですよ。偶然ですねえ」

「本当に偶然ですねえ!ところで高校はどちらでした?」

「伊勢高校です」

「ええ!じゃあ私と同じですよ。私は19期ですが何期ですか?」

「30期です」

「じゃあ、私の11年後輩に当たるわけですね。中川先生はご存じですか?」

「はい、今は教頭先生になっておられます」

「私は、中川先生に国語を習ったのですよ~」


もし、このような共通点に基づく会話が弾んだとしたら、私でしたらそれだけで相手に好意を持ってしまいますが、あなたならいかがでしょう?

おそらく、多くの方が同じような気持ちになるのではないでしょうか。


このように、相手との共通点を見つけてアピールすることは、友好関係を築く上で想像以上の効果を発揮するものなのです。


次の要件である「相手を称賛する」というのは、まさに読んで字のごとしで、称えて賛同の異を表示することです。

相手の意見に同意して相手を誉めあげるのです。

中でも重要なのは「誉める」という点です。


アメリカの大学の研究グループは専門誌に、

「人々は、自分に惜しみない称賛を寄せてくれる相手に非常に強い好意を持つ。例えその称賛が真実でないとしても」

と書いています。


それはそうですよね。

人間誰しも、誉められればうれしくなり相手に対して好感を抱くものです。


具体的には、休日にもかかわらずこのような堅苦しい題名のブログを読んでいただいているあなた。そう、あなたです。

あなたは、とても向学心があり自分を律する力をお持ちであるに違いありません。私は心からそう思います。


いかがでしょう。

これは紛れもない真実です。

多くの人々がゴールデンウイークでレジャーに出ているのに、(仮に空き時間を利用していたとしても)このような内容のブログを読んでいるあなたは、間違いなく普通の人より秀でているはずです。


これで気を悪くされた方がいたとしたら、ロバート・B・テルディー二の説く心理学が間違っていたということになりますね(笑)。


以上述べましたように、相手を説得するためには相手との友好関係を築かなければなりません。


そして、そのためには「相手との共通点をアピールすること」と「相手方を称賛すること」の2つが必要なのであります。


ご理解いただければ、天気のいい休日にこのようなブログを書いた私の苦労も、少しは報われます・・・(^^;)