英語や国語(中でも古文)等の学習には、当たり前のことですが辞書が必要です。

最近は、とても便利な電子辞書が普及しており、電子辞書を使用している学生諸君がたくさんいるようです。


しかし、私は英語や国語に関しては、是非、”紙の辞書”を使用することを、強くお勧めします。


持ち運びが不便なので、どうしても軽い電子辞書に傾きがちですが、紙の辞書ににはそれを上回る効用があるのです。


まず、最初に挙げたいのは、一覧性の高さです。


紙の辞書を開くと、そのページ全体が目に飛び込んできます。

すると、以前調べてマークした単語や熟語が、開いたページにあるということが(紙の辞書を使いこなしていると)頻繁に生じます。


つまり、開いたページが一覧できることによって、思わぬ復習効果が期待できるわけです。


また、この一覧性は、調べた単語に関する「意訳」や「同義語」「対義語」、はたまた重要な熟語(多くの辞書では太字にしてあります)も、目に入ってきます。

つまり、意味を調べる目的で開いたところ、目指す意味以外のものが自然に目に入ってきて、ビジュアルに頭に残ります。


すると、開いたページにあった熟語を後日調べたとき、

「あ、この熟語、この前、単語の意味を調べたときにあったよな~」

と、以前調べた単語とリンクして頭に残ります。


このように、左右のページを一覧することにより、無意識的に他の単語や関連する熟語などを覚えることができるのです。


新聞を開いたときに感じたことはありませんか?


別に関心のない見出しでも、一覧性の効果で、なんとなく頭に残っているようなことが。


このように、紙の辞書の一覧性の効果は極めて強力なもので、電子辞書では到底及ばない大きな利点と言えるでしょう。


次の利点としては、紙の辞書の一覧性に関わりますが、目的とする単語や熟語を右脳でビジュアルに記憶できるということです。


ある単語を調べたのに、試験の最中で忘れてしまったとします。

出てきそうで出てこない・・・あ、辞書の右ページの左下にあったよな~。

そうそう、思い出した。


という現象が生じるのは、決して珍しいことではありません。

辞書のどこに場所に書かれていたか等を、ビジュアルに右脳で記憶しておくと、かなり強力な記憶として定着し、記憶換気の大きなきっかけになります。


以上のことは、国語の辞書にも言えることで、例えば、中学受験生でも紙の辞書になじんでおけば、自然に語彙力が増えてきます。


このように、紙の辞書をひく癖を付けておけば、電子辞書では到底及ばない強力な効果が期待できます。


ところで、法律などを学習していますと「法律用語辞典」というものの存在が気になります。


大学時代、私の友人が、

「テキストに書いてあることの意味がさっぱりわからん。法律学用語辞典を丸暗記でもしないとダメなのかなあ~」

とボヤいていたのを憶えています。

彼は開成高校出身でした。


私は、

「何をバカなことを。冗談だよな~。俺は法律学用語辞典なんて、買ったはいいが、ほとんど使ってないぞ」

とアドバイスしました。

「じゃあ、わからない用語が出てきたときはどうしてるんだ?」

「うん、とりあえずスルーしてしまうか、そうでないときはテキストか六法の索引で調べるよ」


そうです、法律学用語辞典などというものは、法律学習(特に効率的な学習)においては不要なのです。

テキストや六法の索引を辞書代わりに使用すれば、テキストの場合は、語学の辞書と同様の一覧性効果が期待できますし、六法の場合は、一覧性はもちろんのこと、条文解釈の訓練にもなります。


私は、司法試験受験生だったころも、弁護士として活動を開始してからも、法律学用語辞典はまったくといっていいほど使用していません。

その代わり、テキストや(実務の場合)関連書籍の索引を徹底的に活用しました。


語学の辞書と辞書と法律学用語辞典、その違いはなんだ?


という質問がきそうですね。


端的に申し上げますと、法律学用語辞典は科目別になっておらず、ボリュームによって、まったく知らなくてもいい法律用語も一緒になって掲載されているのです。

特に受験においては科目が限られていますので、受験科目に必要のない用語については一覧性の効果がほとんどありません。


実務においても、知らなくてもいい法律がたくさんあります。

知っておいても実務家としては損はしませんが、例えば、家族法の用語を家族法の大きなテキストの索引で調べた方が、家事事件を多く扱う弁護士にとっては、一覧性の効果ははるかに高いのです。


英語を勉強するときに百科事典を使う人はいないでしょう。

それと同じです。


以上のように、百科事典を調べるのは学習効果としては無駄ですが、英語や国語の学習の際に、英和辞典や国語辞典を調べるのは、とても有効な学習方法なのです。


急がば回れ。

紙の辞書は引き慣れれば引くスピードはどんどん速くなりますが、それでも電子辞書にはかなわないかもしれません。

しかし、効果を併せて考えると、紙の辞書の方がまだまだ優位といえるでしょう。