国語の問題でも法律の問題でも、読書する時にでも、ひとつだけ留意しておくだけで、絶大な効果を発揮する方法があります。
それは、たった2つです。
結論は何か?
理由は何か?
たったこれだけで、国語の論説文の問題や法律をはじめとする社会科学系の問題を解くことができます。
私は、以前から、試験勉強に使用するテキストの「結論」と「理由」(法律のテキストであれば「判例」「定義」「制度趣旨」「反対説」など)を、色分けしてアンダーラインを引いていました。
「定義」なども色分けした法律のテキストは、かなりの色を使いました。
娘が、小4の3学期に上京して本格的な中学受験勉強を始めたばかりのころのことです。
今までまったく習ってこなかった「社会」と「理科」の試験を受けなければなりませんでした(もちろん、国語と算数もありました)
試験までの猶予期間はほどんどありません。
そこで、私は、当時のテキストであった「予習シリーズ」(四谷大塚)の「社会」と「理科」のテキストの重要部分を色分けしてアンダーラインを引いてやりました。
中学受験のテキストにアンダーラインを引いている時に感じたのは、「結論」と「理由」の2色で足りてしまう、ということでした。
司法試験の勉強のように、論文試験で、「定義」や「判例」などを正確に書かなければならないのと違い、普通の文章は「結論」と「理由」がわかれば十分だと感じました。
娘のテキストを「結論」と「理由」に色分けしてアンダーラインを引き、
「結論は赤で、理由はオレンジで色分けしてあるから、アンダーラインを引いてあるところだけを繰り返し読めばいいよ」
と、娘に指示しました。
その結果、娘は、他の受験生が4年生のはじめ(正確には3年年生の2月)から勉強してきた「社会」と「理科」で高得点を取ることができ、上位の成績を残すことができました。
国語の論説文の問題を教える時も、私は娘に最初に、
「この文章の結論はなに?」
と尋ねました。
最初はなかなか答えられなかったり、あれこれ長々と答えていたので、
「どの部分に結論が書いてあるの?」
「それを一言で表すとどうなるの?」
と、段階的に試行錯誤しながら(もちろん、誘導は必要です)、結論にたどり着くようにしていました。
次に、
「じゃあ、この結論の理由はどこに書いてあるのかな?」
「それだけ?他にはない?」
というふうに誘導して、理由部分を見つけ出させるようにしました。
このような特訓(?)の成果が出たのか、娘の国語の成績は安定的に上位をキープすることができました。
私たちが日常的に何かを読んでいても、おそらく無意識的に「結論」と「理由」を探しているはずです。
新聞やテレビのニュースでは、結論は必ず最初に出てきます。
しかし、案外、理由については曖昧であったり、書かれていたりしないことが、ままあります。
日頃から、「どうして?」「原因は?」「(犯罪報道なら)動機は?」と、自問自答する癖を付けると、自然に「結論」と「理由」を探すようになります。
テキストを読むときも同じです。
「結論」と「理由」をしっかり把握できれば(色分けしてアンダーラインを引くなどの方法をお勧めします)、テキストの骨子は必ず理解できます。
余談になりますが、法律学者でも、この原則ができていない記述をする人が相当います。
ある有名な刑事訴訟法の学者のテキストを色分けしていたら、「理由」が書かれていない箇所がたくさんあるのを発見して呆れた憶えがあります。
「法律学の学者の先生でさえそうなのだから・・・」
などと考えてはなりません。
答案を書くときには、必ず「結論」と「理由」をしっかり書きましょう。
これは、普段から文章を書くときにも常に心しておくべきことです。
自分自身が伝えたい結論を書くときには、必ず説得的な理由をつける癖をつけましょう。
そうすれば、その文章を読む相手は(賛否は別として)あなたの意図をしっかり理解でるはずです。
このように、普段の仕事や社会生活において、「結論」と「理由」を明確にする癖を付けておけば、試験勉強以外でも強力な武器になります。
噂ではありますが、「不毛地帯」(山崎豊子著)のモデルになった、瀬島龍三氏(名前の漢字が間違っていたら失礼)は、部下に報告を提出させるときに次のようなルールを命じたそうです。
まず「結論」を書け。
次に、その「理由」を3つ以内で書け。
いかがでしょう。
「結論」と「理由」が伝達手段の中で最も重要であることがご理解いただけたと思います。
試験問題に利用される論説文も、学習のテキストも、あなたの書く答案も、すべて文字による伝達なのですから。