近年、予備校や塾が指導する学習方法が、復習重視主義に偏ってきたような気がします。
確かに、試験に合格するという観点から考えれば、復習重視の学習をしたほうが有益かもしれません。
都市部の大学受験生は、予備校で教えられたことをしっかり復習して学力を身につけ地方の大学受験生は自分であれこれ工夫して学力を身につけ傾向がある、というようなことを雑誌か何かで読んだことがあります。
これは、都市部には優秀な予備校講師や塾講師が集まっていることから、その教えをしっかり身につけることが合格の近道となり、地方には(サテライン予備校なども増えてはいるものの)、合格に直結するようなことを教えてくれる講師が少ないということが原因なのでしょう。
しかし、私は、敢えて、予習重視主義の学習をお勧めします。
余談になりますが、私は小学生だったころ、4年生の時に絵を、5年生の時に算盤を、6年生の時に習字を、習い事として週に1回行っていました。
学習関係の塾に行かなかったのは、兄に期待していた両親の意向だったのでしょう(皮肉なことに、兄は3浪の末、偏差値最低の歯科大学に多額の寄付をして入学するという結果になりましたが)。
5年生で算盤を習っていたときのことです。
足し算、引き算、かけ算のやり方まで習って、たまたま先生がいなかったので、「割り算はかけ算の反対をやればいいのだろう」
と勝手に考えた私は、問題集の割り算の部分を、かけ算の反対の方法でけっこうやってしまいました。
戻ってきた先生が、
「荘司君、割り算のやり方教えていないのに、どうして割り算の問題をやったの?」
と聴かれましたので、
「引き算が足し算の逆だから、割り算はかけ算の逆のやり方でやったんです」
と答えました。
周りにいた上級の子どもたちから大爆笑が起こりました。
算盤の割り算は、かけ算と逆の方法ではやらないのです。
割り算独特の方法があるのです。
「でも、答えは合ってるよ」
と、執拗に食い下がる私に向かって先生は、
「答えだけが合っていても、きちんとしたやり方でやらないと算盤はだめなのです」
と、たしなめました。
算盤教室から帰宅しても、私はどうにも納得できませんでした。
答えが合っていれば、かけ算の反対のやり方でもいいんじゃないか?
つらつらと考えましたが、結局、納得する解答を探し出すことはできませんでした。
より効率的で速い方法で計算することが算盤の基本であるということまで、当時の私には考えが及びませんでした。
つまらない余談ではありますが、私が勝手にかけ算の反対の方法で算盤をはじいたことを予習と考えると、その後の先生の修正は授業だと考えることができます。
つまり、予習の段階で、あれこれ自分なりに考えておくと、授業の時に教えられたことがとても印象に残る、というひとつの例だとお考え下さい。
試験勉強をするときも、授業の前に、自分であれこれ試行錯誤しておくと、先生の説明で、自分の考えと異なっていたときや、合っていても”より効率的な解き方”があることを知ると、とても印象に残り、授業内容が頭に定着しやすくなります。
更に、自力で「あ~でもない、こ~でもない」と考えるプロセスが、考える力を養う上でとても重要だと私は信じています。
このような試行錯誤のプロセスは、試験で、見たこともないような問題に出くわしたときに、大きな力を発揮するでしょう。
はたまた、自分の頭だけで試行錯誤する癖を付けると、社会に出ても”できるビジネスパーソン”になれます。
実社会では、先生が最初に解法を教えてくれるようなことはありません。
しばしば、過去に例のないような事象に直面し、そのたびにあれこれ試行錯誤して決断を下さなければなりません。
試験勉強で試行錯誤のプロセスを身に付けておけば、実社会に出てからも必ず役に立つはずです。
勿論、試験勉強においては、復習は極めて重要かつ効果的な方法です。
この点と方法については、後日、説明いたします。
算盤の例は単純でバカバカしいことかもしれません。
しかし、習ってないから先生が来るまで待っていようと考えるよりは、自分の頭で考えて試行してみようとした方が、恥をかいても、やり方の習得という観点からは早道でした。
予備校や塾の授業に出席ている場合は、授業の前に(少しの時間でもいいですから)、授業内容についてあれこれ自分の頭で試行錯誤してみましょう。
授業の効果が全然違ってくること請け合いです。
授業を聴くときの集中力にも自ずから違いが出てきます。
またまた(恐縮ながら)私自個人のことを申しますと、大学受験勉強においても、司法試験受験勉強においても、私は予習重視主義で通しました(司法試験受験の時は、講義テープを聴く前に、ひととおり予習をすることを一度も欠かしませんでした)。
もっとも、復習をおざなりにしてしまって、何度も痛い目に合ったことも告白しなければなりません。
復習重視主義が幅を効かせている今日、今日のブログをお読みいただいて、予習の重要性を少しでもご認識いただければ幸いです。