昔、民法の大家の我妻栄先生が、ご著書で「憶えようとするのではなく、理解しなさい」という趣旨のことを書かれました。


数学などの科目では、「憶えるのではなく理解が大切だ」と力説する先生方が少なくありません。


勿論、法律学にしろ数学にしろ、理解が伴っていなければ暗記をしても意味がない場合が多いでしょう。

しかし、このような先生方の話を鵜呑みにして、暗記作業を怠っている受験生がたくさんいます。


私の旧長銀時代の上司のKさんは、

「ぼくは、数学の教科書や参考書はとてもよく理解できたのに、何故か成績は振るわなかったよ」

とぼやいていました。


私が、

「Kさん、数学は理解できても、それを答案に書けなければ意味がないのです。答案に書けるようになるためには、解法を頭に叩き込んで、反射的に解法が出てくるくらいまで記憶する必要があるのですよ」

と、説教くさいことを言ってしまったので、Kさんはいささか不愉快な顔をしてしまいました(笑)。


法律学にしても、近年のポピュラーな基本書である内田貴先生の本には、「かつては法律学は理解するものだと教えられてきたが、記憶するという作業が重要であることを忘れてはならない」というような趣旨のことが書かれています。

これは、学生たちが、基本的な事項や基本的な判例の言い回しを、全く暗記せずに訳のわからない表現で答案を書く傾向が顕著になったことに対する警鐘ではないかと、私は思っています。


某司法試験予備校の人気講師だった方が口癖にしていたことが、

「自分の言葉で書けばいいんですよ」

ということでした。


しかし、私はそれを聴いて、

「よほどの文才でもない限り、採点者がさらりと理解してくれるような表現を自分の言葉で書けるわけないじゃないか!」

と、強い反感を抱いたものです。


和田秀樹先生が「暗記数学」なる言葉を頻繁に使用されていますが、これは、数学を解くためには”基本的な解法を頭に叩き込む”ことを意味しているものと思われます。


私が高校時代にお世話になった先生は、

「数学は暗記科目ですよ。そして数学の解答は芸術です」

と口癖のように言っておられました。

当時の「綠チャート」の例題くらいは、問題を見ただけで解法が頭に浮かんでくるくらいにしておかないといけない、ともおっしゃいました。


国語や英語でも、文法や単語などを暗記しなければならないことについては、異議のある方はおられないと思います。

数学の基本的な解法や、法律学などの定義や判例の重要語句なども、当然、憶える必要があります(憶え方、つまり方法は異なりますが)。


そこで、どうやって暗記するかというと、丸暗記と、モノにする暗記とで、若干異なります。


英単語のように丸暗記するような場合は、単語集の暗記すべき範囲を決めておいて、すらすら答えが言えたものは○をつけ、言えなかったものや苦労したものは△をつけて、2度目は△のついたものだけをチェックし、それでもすらすら出てこなかったものは、×をつけて更にもう一度・・・というふうに、反射的にすらすら出てこなかったものを何度も何度も繰り返して、最後には全部すらすら言えるようになるようにします。

(○、△、×は適当に書いたものです。チェック方法はご自由にされて下さい)


そして、翌日か翌々日に、できなかったチェックが多いものから確認していき、ひととおりすらすら答えられるようになれば、とりあえず「良し」としましょう。

試験前に、単語集なりをザザッと読んでいき、全部すらすら言えるようになれるようになれば完璧です。


このような方法を、私は「短期繰り返し暗記法」と勝手に名付けています。

英単語や漢字など、丸暗記を短気かつ効率的に攻略する方法です。


娘の中学受験でも、漢字は、私が問題を言って、娘が素早く書き取る、書き取れなかったものには私がチェックをして2度目、さらに3度目・・・をやらせたところ、短時間で記憶を定着させることができました。

次回に前回のおさらいをすることと、試験前に最終チェックをすることも忘れませんでした。

ゆっくりゆっくり、丁寧に書いていても、漢字を効率的に覚えることはできませんし、なにより時間がかかりすぎてしまいます。


数学の解法のように、モノにする暗記の場合は、ともかく基本問題を解きまくるのです。基本問題の「数字」や「前提」を少し変えたものをどんどん解いていくと、自分が本当にその解法を理解したかどうかをチェックすることができます。

チャート式などは、例題の下などに「反復用」の基本問題が掲載されています。


間違っても、公式や解法を憶えようとして、何度もノートに書き写すようなことはしてはなりません。

モノにするためには、条件が変わっても確実に解けなければ、解法を頭に叩き込んだとまでは言えないからです。


暗記するための小物として、最近、使い勝手がいいのがステッドラーのペンです。

ラインマーカーのように裏に写りませんし、軽快に文字を浮かび上がらせることができます。

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もちろん好みがありますので、いろいろと試してみて下さいね。