試験勉強をするに当たって、どうにもスルーしにくい雑誌類があります。


例えば、中学受験なら「中学への算数」、司法試験なら「判例百選」などのようなものです。


まず、ある意味”有害図書”といえるのは「判例百選」でしょう。

法学部の大学生も、補助教材としてよく指定されていますし、昔の司法試験では「民法は百選を全部潰さなければならない」と初心者に説いていた予備校講師もいます。


しかし、あくまで私の考えですが「判例百選」を読むのは、試験勉強という観点からすると”有害無益”です。


実は、私の娘が大学の授業で民法を選択したときに「民法判例百選Ⅰ」を指定されて、それを読みながらうんうん唸っていました。

それを見た私は、即座に読むのを読むのを止めさせました。

「こんなもの潰してたら、民法が嫌いになるぞ」

と言って。


異論があるかもしれませんが、「判例百選」はそれぞれのケースの事案(xとかyとか訴外Aだとかの関係)を把握するのが、まず面倒です。

実際、受験時代のみならず今読んでも、関係性を把握するだけで面倒でイヤになってしまいます(専門家用の「判例時報」などの方がよっぽど読みやすいんじゃないかと思うくらいです)。

また、「判例百選」には、ひとつひとつのケースに膨大な解説が付されており、目を通すだけでも半端じゃない時間がかかります。

要するに、コストパフォーマンスがものすごく悪い教材なのです(少なくとも私にとっては)。


私自身は、「判例百選」は、たま~に「判旨」の部分を確認することはありましたが、それ以外は全く使わずに司法試験に合格しました。


表現は悪いですが、「判例百選」は、初心者を迷宮に迷い込ませるための絶好の教材としか思えません。

重要な判例は、テキストなどにしっかり掲載されていますので、それを読んで理解し、憶えれば必要十分なのです。



次に、「中学への算数」から「大学への数学」シリーズについて、若干個人的な意見を書いておきます。


「判例百選」が”有害無益な書”だとすれば、これらのシリーズは”危険な書”と表現すべきでしょう。


「高校への数学」は私は読んだことがないので何ともいえませんが、「中学への算数」と「大学への数学」は、しっかりと中身を見ていますし、読んでもいます。

いずれに対しても、確実に言えることは、やたらと難問を揃えているという点です。


算数や数学は、基本問題を反射的に回答できるくらいにならないと一人前とは言えません(これは、あくまでハイレベルを目指す受験生を対象にしています)。


中学受験生であれば、塾が課題として出している日々の演習の類いや、日能研が販売している「ベストチェック算数」で繰り返し出てくる基本問題を、あれこれ考えることなく反射的に解けてしまうレベルでしょう。


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大学受験生であれば「青チャート」シリーズの基本問題を、同じく反射的に解けてしまうレベルです。

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私が大学受験をした時代には、最も基本的な「綠チャート」というシリーズがありました(今の「青チャート」と「黄チャート」の中間くらいなのかもしれません)。


余談になりますが、私は高校で「綠チャート」が副教材として指定されていましたので、何度も繰り返し読み解き、ほとんどの問題は反射的に解法が浮かんでくるくらいになりました。


このように、算数や数学は、基本問題が反射的に解けるくらいにならないうちに、難解な応用問題に取り組むのは大変危険です。


なぜなら、応用問題というのは、基本問題をひねったり組み合わせたりして作成するものですから、基本をがっちり固めておかないと、ひねり技や組み合わせ技に対処できるはずがないからです。

たまに、塾で勉強したのと同じような問題が解けることもありますが、これはあくまで”ラッキーパンチ”です。


そういう意味で、「中学への算数」や「大学への数学」は、基本がしっかりできていない受験生にとっては”危険な書”と言えるのです。

自信を失うだけでなく、基本を疎かにしてしまう恐れがあります。


大昔の私自身の経験ではありますが、「綠チャート」の基本問題を徹底的にマスターした後、「大学への数学」のこれまた難解な別冊の問題を解いていたとき、ようやく数学の”美しさ”のようなものを体感した憶えがあります。


中学受験では、基本問題さえ反射的に解けるようになれば、たいていの難関校には合格できます(もちろん、過去問にしっかり取り組んでおくことが大前提ですが)。


親御さんにとっては、「基本問題ばかりやっていて大丈夫なのだろうか?」という焦りが生じてくることでしょう。

ここで決して間違ってはいけないことは、塾でやったばかりの範囲の基本問題ができることと、半年前や一年前の「範囲」の基本問題は”違う”ということです。


塾で勉強してきたばかりの「範囲」の基本問題ができるのは、真面目にやってさえいれば当たり前のことでしょう。


では、半年前に習って、その時スラスラ解けた基本問題が、現在も同じようにスラスラ解けるか、と言われれば、多くの受験生はそうではないのではないでしょうか?

特に、小学生の頭脳は驚異的なスピードで発達していきますし、忘却も早いものです。


「学びて時にこれを習う」ではありませんが、かつて学んだ事項の基本問題を、毎日短時間でも解いておくことが、基本のマスターの早道ではないでしょうか?