以前、役所の無料法律相談を担当していたとき、60代~80代の夫婦が「離婚の相談」という案件で来られることが多かったです。

 最初のうちは、てっきり本人たちの離婚の相談だと思い、

 「申し訳ありませんが、対立当事者双方のご相談にのることはできないのです」

 と言ってお断りしようとしたものです。

 しかし、よくよく話を聴いてみると、息子さん、娘さんの離婚の件で、ご両親が相談にみえたのです。


 「ご子息はおいくつですか?」

 「42歳です」

 「それでしたら、ご本人がいらっしゃるようにしていただけませんか」

 「ところが、息子は九州に住んでいるものでして・・・」

 「・・・・・・。」


 こういうやりとりが、毎回8件の相談のうち1件くらいはあったものです。


 これは「子離れ」というものができていないのかな?と思いましたが、必ずしも原因は「子離れできない親」だけのせいではなく、「親離れできない子ども」という場合も相当あるのです。


 私が担当した事件でも、相談や打ち合わせに来るのが親ばかりでしたので、「相手方に内容証明を送る前に最低1回はご本人と会わせて下さい」と念押しすると、「本人は私たちに頼りきりで、先生の事務所に来るのも嫌がるのです」と言われる始末・・・。

 やむなく、一度だけ私の方が本人の勤務先に赴いて確認をし、後は電話で打ち合わせするしかないということもありました。

 まあ、こういうケースは、「親離れ」も「子離れ」もできていないのでしょうねえ。


 別の事案で、夫が退職近いという夫婦の離婚事件で奥さん側の依頼を受けました(争点にしたのは、将来給付される予定の退職金に対する財産分与でした)。

 依頼者の奥さんから事情を訊きながら「陳述書」を作成していると、どうやら夫婦関係に夫の母親がかなり関与してきて、それが不仲の原因の一つになっていたそうです。

 

 いくらなんでも、60歳近い男性がマザコンなんてこともないだろう。


 そう思って法廷に通っていましたら、和解成立(調停成立)の期日に、夫本人にかなりのお年の老婦人が付いてきたのを見かけました。

 あ!あれが夫のお母さんか!それにしても60にならんとする息子に同行するというのは、親子の相互依存が強すぎるのでは・・・と、何だか見てはいけないものを見てしまった気分になったものです。