金銭請求訴訟等の依頼者が来たとき、依頼を受ける前に必ず確認することがあります。

 それは、証拠が揃っているか、勝訴の見込みがあるのか、等々より、もっともっと大切なことです。


 相手に支払い能力があるのかどうか?


 ということです。


 しっかり借用証があったとしても、不倫の証拠が揃っていたりしても、相手に支払い能力がなければどうしようもありません。

 「金1000万円、及びこれに対する○年○月○日から支払い済みに至るまで年5分の金員を支払え」

 という判決をもらっても、相手に支払い能力がなければ、まさに「絵に描いた餅」です。仕事はフリーター、本人名義の不動産等はゼロ・・・というような相手ですと、せっかくもらった勝訴判決を執行することができないのです。


 相手が公務員ですと、少し心が躍ります。

 公務員は、まず辞めることはないでしょうし、時間がかかっても給与の差し押さえで回収することができるからです。

 担保のついてない不動産は、請求額と不動産価値を比較しないと、とんでもなく価値の低いものが、ままありますので、要注意です。また、不動産執行をしても、あーだ、こーだとゴネて出ていかない輩がいたり、変な連中が入り込んだりして、もう一手間かかってしまうことも、ままあります。


 意外と思われるかもしれませんが、配偶者の不倫相手に対する慰謝料請求は、私の経験では極めて効率的に賠償金を取れるものなのです。

 書き慣れてしまって5分もあれば書けるような内容証明を送りますと、ほとんどの相手方は、金額の多寡は別として、事実を認めて慰謝料を支払ってくれます。

 人間というのが意外に正直なのか、それとも、こんな案件で裁判所に呼び出されるのが嫌なのか、理由はわかりませんが・・・。

PR)これらのことについては、拙著「男と女の法律戦略」にわかりやすく書いております。

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 しかし、どのような場合でも、

 「相手に支払い意思と支払い能力がなければ、勝訴しても絵に描いた餅になりますよ。そうなると、着手金をドブに捨てるようなことになりますが、それでもやりますか?」

 と、必ず念押しをして、着手金と成功報酬等をしっかり記載した弁護委任契約書を作成してから(これを作っていない弁護士が多くて、後々トラブルになることが多いです)、正式に受任するようにしています。


 そこまでやっても・・・希に回収できないときは、いろいろと嫌な思いをすることがあるのです。