欧米の大スターたちの莫大な慰謝料が話題になっています。

しかし、残念ながら(?)日本ではそのようなことはまずあり得ません。

特に私たち一般庶民の間では・・・。


まず、多くの方々が疑問に思うのは、財産分与と慰謝料の相違でしょう。


一般的には、慰謝料は婚姻期間中に受けた心身に対する損害賠償で、財産分与は婚姻期間中に蓄えた財産の精算だと説明されることが多いです。


その考えだと、浮気もせず暴力もふるわず真面目に結婚生活を営んできた夫や妻には慰謝料支払い義務はなく、分けることのできるような蓄財もなければ、慰謝料も財産分与も発生しないことになってしまいます。


しかし、実務では慰謝料と財産分与をまとめて「離婚給付」と呼ぶことが多いのです。

慰謝料は交通事故の慰謝料とは質が異なり「離婚給付」のひとつと割り切った方がわかりやすいというのが私の考えです。


では、具体的にどのように分けるのでしょう?


まず、蓄財が1000万円あれば、その蓄財への「貢献割合」、離婚後の「扶養的要素」、「慰謝料的要素」を考えて分ければいいでしょう。


「貢献割合」にいわゆる「炊事」「掃除」「育児」などの家事が含まれるのは言うまでも有りません。

特に「育児」は重要なファクターです。

夫婦の原初的な役割が子孫を残していくことにあると言うこともさることながら、子供をいっちょまえの社会の一員として決して他人に迷惑をかけないように育て上げるのは昨今では大変な労力ですから。


このように考えると、多くの場合育児を担っている妻の貢献割合が高く評価されるよになってきています。


また、蓄財への貢献度が全くないケース、例えば子供がいなくて夫か妻が病気がちで入院費ばかりかさみ、他方の稼ぎに頼ってしまったような場合。

貢献割合としては病気がちの配偶者はマイナスですよね。


そういう場合に登場するのが「扶養的要素」です。

離婚後、とりあえずある程度の期間生活していけるための金銭を分与する理由付けになります。

もっとも、それほど多額にはなりませんが・・・。


では、蓄財がなく、慰謝料としての原因もないような場合、離婚判決での離婚給付はゼロなのでしょうか?

双方が仕事に就いていて生活に困らないようであれば、ゼロでいいでしょう。


ところが、乳飲み子を抱えて仕事にも就けない場合や、先の例のように病気がちで仕事にも就けない場合は、多少なりとも働いている側からの給付があってしかるべきです(扶養的要素として)。


ところが離婚判決の場合にややこしいのは、慰謝料として●●万円支払え。財産分与として××万円支払え。という範疇だけで、離婚給付として▲▲万円支払え。というものがないのです。

それはそうでしょう。

法律の条文には、慰謝料と財産分与しかありませんからそれ以外のものを裁判官が作ってしまうのはれっきとした立法作用になってしまい、三権分立に違反します。


こういう場合は、慰謝料として扶養的要素にあたる金額の支払いを命じることが多いようです。


もっとも、このような判決文に不満を抱く当事者も少なくありません。


「こんな些細なことで慰謝料を認めるなんて!!」と怒り狂う当事者を、そもそも論で説得するのは結構大変なのです。


離婚後の請求権の時効も、財産分与は2年、慰謝料は3年と区別されていることも当事者を説得することを困難ならしめてしまいます。


民法改正で「離婚給付」という項目を加えてほしいと私が切に願うのには、このような背景があるのです。