今回の原発事故について、政治の世界では与党が野党を責め立てているようです。


そこで、私としては法律的にこの問題を整理してみたいと思います。


まず、今回の事故の原因はいったい何だったのでしょう?

私は原発についての知識が乏しいので、正直言って技術的なことを述べることはできません。


余談ですが、弁護士という職業は、自分がそれまで全く知らなかった事柄について訴訟を起こしたり、被告側に立って反論しなければならないことがままあります。

そういうときは、専門書をたくさん買い込んでにわか勉強をしつつ関係者の話を聴いてなんとか訴訟に備えます。

(もちろん、わからない事柄が絡んでいる訴訟は絶対に受けないという弁護士の方が責任感が強いとも言えますが、全く歯が立たない領域でない限り私はトライするようにしてきました。 依頼者にもその旨納得してもらって)


横道にそれてしまいました。

事故の原因について考えてみましょう。


1 原発を所有していた東電が普段から行うべきことを怠っていた?


2 原発を製造したGEの設計や製造過程に問題があった?


3 原発を監督すべき国が、本来行うべき調査を怠った?


などなどが考えられますが、そもそも福島原発を作る際、また稼働している間に明確な義務違反があったと言えるのかどうか私にはわかりません。


数年前、微々たる報告義務を怠ったということで東電でしたか電力会社が監督官庁から厳しく叱責されたことを考えると、設置と稼働において、それぞれの時点での義務違反があったとは考えにくい言う程度です。


おそらく、東電の社員(特に技術者)は「日本沈没が起こっても壊れない原発を作れというのか!」という気持ちが強いのではないでしょうか?


日本で、約40メートルの高さの津波が起こるなんて誰が想像できたでしょう?


約40メートルといえば、ウルトラマンの身長と同じですよ。



もっとも、今日の日本の法律では土地の工作物である原発の破壊と因果関係にある被害に対しては無過失責任を負いますし、原子力関連法にも責任規定があると思います。



今、最も政治的な対立になっているのは事故後の政府や東電の対応、すなわち事故発生の原因ではなく、発生してしまった事故の被害をいかに最小限に食い止めるべきであったかということでありましょう。

つまり、被害を最小限度に止める東電と政府の義務が、極めて杜撰だったか否かという点が争点になっているようです。


しかし、ちょっと待って下さい。


もう原発事故は収束したのでしょうか?


先般、ラジオを聴いていたら、ある学者が「峠を越えたどころか、まだ峠にもさしかかっていない」と話していました。

その学者の意見に従えば、今の時点は事故後の処理という意味では「前段階の更に前段階」という被害拡大を防止するための最大限の努力が必要とされる時期なのです。


今、国会でせめぎ合っている間にも事態はどんどん変化しているのかもしれません。

もしそうだとしたら、事後処理も終わらないのに事後処理の責任追及をしたりそれに対抗したりするのは愚の骨頂。


逐一、現状を国民や国際社会に報告し、どのような措置を講じているのかを公表することが第一ではないでしょうか?


もちろん、これは「峠を越えたどころか、まだ峠にもさしかかっていない」という見解を前提にしたものですので極論かもしれません。

ただ、終息宣言をする前に責任追及で争うのは、サッカーの試合の前半も終わっていないのに「誰が悪かった」と批判するようなもので、いささか滑稽です。


野球にたとえれば、WBSのイチローのように最後の一振りで情況が一変することだって十分にあるのですから。