最近、円安が進んだと思ったら円高に少し戻ってトレンドが見えません。

そこで、私なりの考えを以下に述べてみます。


まず、多くの方々が不思議に思うのは「日本がこれほどの大災害を受けたのに円がさほど売られないのはなぜか?」ということでしょう。


ご存じのように、今の日本は対外資産をたくさん持っているのです。

個人で外貨預金や海外投信を持っている人もたくさんいます。

早い話、ドルをはじめとする外貨をたくさん持っている訳です。

専門用語で言えば「資本収支」が大黒字なのです。


今回の大災害で、個人も企業も多くの円資金が必要になったことと先行きに対する不安から外貨を売って円を買うという行動に出た者ものと考えられます。

それが、大災害後の超円高に結びつきました。


ではこれからはどうなるのでしょう?


復興のためには原材料をはじめとしてたくさんの物資を輸入しなければなりません。

海外からの買い物は概ねドルやユーロなど外貨で支払われますので、輸入代金を支払うために円を売って外貨を買うことになります。

しかも大規模な輸入が必要です。

それに対して、国内では根幹となる電力が不足することから、日本国内で生産して海外への輸出は激減するはずです。

ただし、少しの電力や原材料で高価格のモノが占める割合が高ければ激減とまではいきませんが・・・。


このように、貿易収支が赤字になっていくことから円が売られ円安傾向がすすんでいくでしょう。


更に、欧米の諸外国ではインフレ懸念から金利を上げる動きが高まっています。

先進国で金融緩和を続けているのは極論を言えば日本だけです。

復興のためには金融緩和は不可欠ですので、内外金利差はますます顕著になっていくでしょう。

金利の高い通貨を買うのは投資家として当然のことです。

(現に、ゼロ金利の日本に対して、豪ドル定期預金などは2~3%の利息がついています)

かくして、緊急の円需要が一段落すれば、日本の個人や法人は少しでも有利な外貨を買うようになっていくでしょう。


ダメ押しは、高齢化と失業です。

日本での個人金融資産の6割以上は60歳以上の人たちが保有しています(数字は記憶違いがあるかもしれません)。

高齢化で金融資産(多くは円だと想像できます)を取り崩していけば、銀行や郵貯の残高が減少し、銀行や郵貯は国債を買う余力がなくなってしまいます。

失業で預貯金を取り崩す場合も同じです。

このように普通のペースでも国債消化が困難になる上、復興のための国債を発行すればますます消化が困難になります。


海外投資家が日本国債を気前よく買ってくれればいいのですが、原子力災害という予断を許さない状況下ではそうもいかないでしょう。

場合によっては、日銀の直接引き受けもありえます。

そうすると円が世間に大量に出回ることになり、当然のことながら円の価値は下がります。


ということで、一時的には外貨を崩して緊急の円を買う動きがでるものの、中長期的には円安方向に向かって行かざるを得ない、というのが私の考えです。


もちろん、予測ですから外れても一切責任は取れませんので、よろしくご了承下さい。