【登場人物】
中村 汐里(33・21)…看護師(成人のイメージ:三浦透子さん)
中村 龍人(31・19)…汐里の弟・宅配業(成人のイメージ:岡崎体育さん)
日野 倫代(29・17)…汐里の妹・主婦(成人のイメージ:見上愛さん)
日野 航平(30)…倫代の夫(イメージ:森永悠希さん)
中村 博美(58・46)…汐里達の母親(イメージ:片岡礼子さん)
中村 和彦(47・40)…汐里達の父親(イメージ:佐藤二朗さん)
中村 健次(46・35・28)…和彦の弟(成人のイメージ:波岡一喜さん)
〇中村家 玄関(回想)
何度も鳴らされる玄関チャイム。
扉を開ける博美(46)。
勢いよく入ってくる健次(35)。
健次「お久しぶりでーす、お義姉さん」
博美「あ…健次さん。どうしたの?」
健次「(ズカズカと部屋に上がり込みながら)どうしたの?はないでしょ。だって、兄貴
死んじゃったじゃん」
〇中村家 居間(回想)
博美「そのことは連絡したでしょ。それなのに、どうしてお通夜にもお葬式にも来なかっ
たの?」
健次「だってさぁ、香典持って行かないとダメなんでしょ?それに俺、アレ、喪服?黒い
ヤツ、持ってないんだよねぇ」
博美「そんな理由で?喪服なんてレンタルでもあるじゃ…」
健次「(博美の声を遮るように)死んだヤツに金使いたくねぇんだよ」
博美「死んだヤツって…あなたのお兄さんじゃない!」
健次「そう。お兄さんなんだよねぇ」
と、部屋中をジロジロと見回す。
健次「俺さぁ、知らなかったんだよなぁ」
博美に顔を近づける健次。
博美「!」
健次「形見分け?ってヤツ」
博美「形見分けって…葬儀にも来なかったのに」
健次「だから今日来てやったんじゃない。形見分け貰いにさぁ。なぁ、なんか無ぇの?
俺の分の形見分け」
と、勝手にタンスの引き出しを開け物色し始める。
博美「ちょ、ちょっと!やめてよ!」
と、健次の手を押さえる。
博美「実の兄の葬式にも来なかったくせに、形見分けだけしてもらおうなんて、どういう
神経してるの!」
健次「うるせぇなぁ!チッ!なんも無ぇのかよ金目のもん。おっ!」
と、タンスに掛けてあるライダースジャケットを見つける。
健次「イイのあるじゃんか!」
と、ジャケットを手に取る。
博美「やめて!それは、龍人のよ!」
健次「自分で買ったのか?龍人」
博美「龍人の就職祝いにあの人が買ってあげたものなの」
健次「兄貴が買ったんなら兄貴のもんだろ。これ、形見分けに貰っていくわ。高く売れそ
うだしなぁ」
と、ジャケットを手に出ていこうとする。
博美「返して!それは龍人の!あの人の形見なんだから!」
と、健次に掴みかかる。
健次「放せよ!ババァ!」
と、博美を蹴とばす。
立ち上がり何度も健次に掴みかかる博美。
〇中村家 居間(現在)
航平「取られちゃったんですか?形見のジャケット」
龍人「いや、母さんが必死に守ってくれて…」
〇中村家 居間(回想)
ジャケットを抱きしめて座り込んでいる博美。
博美に駆け寄る龍人と汐里、驚きの表情になる。
顔を腫らし擦り傷だらけの博美、笑顔で龍人にジャケットを渡す。
〇中村家 居間(現在)
龍人「母さんの必死の抵抗に諦めたのか、アイツは母さんの財布から現金奪って帰ってった
らしい」
汐里「『死守したわよ、お母さん!どう?スゴイでしょ』って、お母さん、傷だらけで笑って
たね」
涙を拭う龍人。
航平「そんなことが…」
と、博美の遺影を見る。
博美の遺影。
龍人「そんなヤツだからさぁ、母さんが亡くなったことを知ったら、また来ると思うんだ」
汐里「そうね…」
倫代「何か奪いにくるってこと?さすがにそれはないんじゃないかなぁ。お父さんが亡くな
ってからずっと貧乏だったんだし、お母さんまでいなくなった私たちにお金がないこと
ぐらい、アイツでもわかるでしょ」
龍人「そうだな…」
汐里「でも、用心するに越したことはないかも」
…続く…