【登場人物】
中村 汐里(33・21)…看護師(成人のイメージ:三浦透子さん)
中村 龍人(31・19)…汐里の弟・宅配業(成人のイメージ:岡崎体育さん)
日野 倫代(29・17)…汐里の妹・主婦(成人のイメージ:見上愛さん)
日野 航平(30)…倫代の夫(イメージ:森永悠希さん)
中村 博美(58・46)…汐里達の母親(イメージ:片岡礼子さん)
中村 和彦(47・40)…汐里達の父親(イメージ:佐藤二朗さん)
中村 健次(46・35・28)…和彦の弟(成人のイメージ:波岡一喜さん)
〇中村家 仏間
健次「お前らは兄貴の代わりなんだから、黙って俺の言うこと聞いてればいいんだよ!」
と、汐里の肩を掴み、大きく手を振り被る。
汐里「!」
倫代「やめてーっ!」
龍人「や、やめろ!」
大きく振りかぶる健次。
覚悟を決めたように目を瞑る汐里。
勢いよく入ってくる人影、振りかぶる健次の腕を掴む。
健次「!」
振り返る健次、あっという間にねじ伏せられる。
航平「傷害の現行犯だ!」
健次を押さえつけている警官の制服姿の航平。
倫代「航平!」
航平「大丈夫か!倫代。お義姉さん!」
倫代「うん!大丈夫」
驚く健次。
倫代「お姉ちゃん!」
汐里に駆け寄る倫代。
汐里「倫代!」
抱き合う二人。
〇中村家 玄関 外
パトカーに乗せられる健次。
航平「お願いします」
他の警官に敬礼してパトカーを見送る航平、停まっている救急車に駆け寄る。
救急車に乗せられる龍人。
航平「お義兄さん、大丈夫ですか?」
龍人「大袈裟だよ救急車なんて…」
航平「念のためですから」
汐里「私、病院まで付き添うね」
航平「お願いします」
扉が閉まり走り去る救急車。
救急車を見送る航平と倫代。
〇中村家 居間(夜)
鍋の蓋が開けられる様子、上からの目線。
全員「うわぁ!」
湯気の中から見えるおでん鍋。
こたつで鍋を囲んでいる汐里、龍人、倫代、航平。
倫代「やったぁー、おでん!」
龍人「腹へったぁ!さぁさぁ、航平くんも遠慮しないでドンドン食べて!」
と、航平の取り皿に具材を入れる。
航平「はい!いただきまーす」
倫代「お兄ちゃん、あれから航平に対する態度、随分変わったよね」
龍人「当たり前だろう!命の恩人だぞ、航平くんは」
航平「そんな!警察官として当然のことですから」
汐里「本当にありがとう、航平さん」
航平「いえいえ」
口いっぱいに頬張って笑顔を見せる航平。
倫代「それにしても、お兄ちゃんがあんなに弱かったなんてね。無駄にデカイだけなんだか
ら」
龍人「うるせぇよ。俺は平和主義なんだ。喧嘩なんてしたことないんだから、仕方ないだろ」
航平「体の方は、もう大丈夫ですか?」
龍人「大丈夫、大丈夫。口の中ちょっと切っただけだったし」
倫代「あんなに蹴られたのに、骨にヒビも入ってなかったんだって」
と、龍人の出っ張った腹をジロジロと見る。
龍人「な、なんだよ…」
倫代「そうか、このデカさは無駄じゃなかったってことか…」
汐里「天然のプロテクターね」
顔を見合わせて笑う倫代と汐里。
航平「アハハハ!」
航平をジロっと睨む龍人。
航平「あ、すいません…」
汐里「ところで航平さん、この後アイツは、どうなるんですか?」
航平「それなんですが…」
と、箸を置く。
倫代「どうしたの?アイツ、刑務所に入れられるんでしょ?」
航平「今回の場合、傷害罪ではなく暴行罪になる可能性が強いと思うんだ。お義兄さんの
怪我も軽度だったしね」
倫代「暴行罪?それって、どうなるの?」
航平「二年以下の拘禁刑もしくは三十万円以下の罰金または拘留もしくは科料」
倫代「そんな!もう、骨の二、三本も折っとけばよかったのに。(龍人を叩きながら)無駄
に頑丈なんだから」
龍人「えーーっ。そんなぁ…」
航平「万が一、拘禁刑になったとしても一年ほどで出てくることになると思う」
倫代「え?たった一年?」
龍人「そうしたら、きっとまた…」
航平「大丈夫。僕が全力で守りますから!周辺のパトロールも強化します!」
汐里「…」
一気に沈み込む部屋の空気。
下を向いてしまう一同。
上からの目線、グツグツ音を立てているおでん鍋。
…続く…