【登場人物】
吉川 聡美(38)…主婦
吉川 貴弘(40)…聡美の夫
吉川 翔太(10)…長男
吉川 健人(5) …次男
〇住宅地(朝)
雀の鳴き声、電線の雀。
ジョギングする人。
家の前を掃き掃除する人。
〇吉川家 外観(朝)
雀の鳴き声。
〇吉川家 寝室(朝)
薄暗い寝室、サイドテーブルにほおずきの一輪挿し。
カーテンから差し込む朝日。
ベッドの聡美、静かに目を開けゆっくりと体を起こす。
聡美「痛いっ!」
と、頭を押さえ顔を歪める。
ゆっくりと顔を上げ、ぼんやりと部屋を見渡す聡美。
リビングから聞こえてくる声。
ベッドから降りる聡美。
聡美「ううっ!」
激しい頭痛に襲われ座り込む聡美。
(フラッシュ)
草原を走っている翔太と健人。
〇吉川家 寝室(朝)
聡美「え?何…今の」
〇吉川家 リビング(朝)
ゆっくりと部屋に入ってくる聡美。
キッチンで朝食を作っている夫の貴弘。
テーブルにはほおずきの花瓶。
テーブルに食器を並べている長男の翔太、聡美に気付く。
翔太「ママ、おはよう!」
笑顔の翔太。
フライパンを片手に、キッチンから顔を出す貴弘。
貴弘「おはよう。もう少しで出来るから、座って待ってて」
促されて椅子に腰かける聡美。
笑顔で食器を並べている翔太。
〇吉川家 キッチン(朝)
鼻歌を歌いながら卵を割る貴弘。
〇吉川家 リビング(朝)
テーブルをボーッと眺めている聡美、
食器が三人分しかないことに気付く。
聡美「あれ?」
聡美の声にビクッと手を止める翔太。
〇吉川家 キッチン(朝)
朝食を作っている手を止める貴弘。
〇吉川家 リビング(朝)
聡美「ねぇ、どうして三つしかないの?」
持っている箸の束を握りしめる翔太、困ったように下を向いてしまう。
部屋を見渡す聡美。
聡美「健人…健ちゃんは?どうして健ちゃんがいないの?」
俯いたままの翔太。
聡美「翔太、健ちゃん、まだ寝てるの?」
ハムエッグを乗せた皿を持ってキッチンから出てくる貴弘。
貴弘「健人は、母さんのとこじゃないか」
聡美「え、お義母さんのとこ?」
貴弘「そうだよ。お前の体の具合が良くないから、暫くの間、母さんに健人の面倒
を見てもらうことにしただろう?」
聡美「…」
聡美を見つめる貴弘と翔太。
聡美「そうか。そうだったわね」
貴弘「え?あ…あぁ」
聡美「今日は気分がいいから、私、健人のこと迎えに行こうかしら。いつまでも
お義母さんに任せておくのも、申し訳ないし…」
貴弘「ダメだ!」
貴弘の声に驚いて持っている皿を落としてしまう翔太。
皿の割れる音が響き渡る。
聡美「!」
貴弘「大丈夫か?翔太。怪我してないか?」
翔太「だ、大丈夫」
割れた皿を慌てて拾う貴弘。
貴弘「ごめん、ごめん。お、お前はまだ静養が必要なんだ。お医者さんから、そう
言われてるんだから。健人のことは、もう少し母さんに任せておこう」
心配そうに立ち尽くす翔太。
聡美「そうなの。私、そんなに悪いのね」
しゃがんで一緒に破片を拾おうとする聡美。
聡美の拾った破片を取り上げる貴弘。
貴弘「健人のことは心配しなくてもいいからママは自分の体のことだけを考えて。
いいね」
聡美「うん。わかった。うっ…」
頭に手をやり、顔をしかめる聡美。
聡美「また頭痛が…ごめんなさい。私、少し横になるわ」
貴弘「そ、そうだね。それがいい」
部屋を出ていこうと立ち上がる聡美。
リビングの隅に、小さなボールが落ちている。
ボールに気付く聡美。
ボールのアップ。
ボールから目を離さない聡美。
聡美の様子を見て焦る翔太。
ボールから目を離さない聡美。
ボールのアップ。
聡美のアップ。
聡美「うっ!」
再び頭痛に襲われる聡美、頭を押さえながら部屋を出ていく。
聡美の後ろ姿を見ている貴弘と翔太。
翔太「パパ!」
泣きそうな顔で貴弘を見つめる翔太。
不安な表情で翔太を抱き寄せる貴弘。
…続く…