ケイシーがタバコを容認する理由 | 明日の医療と今日みた夢と

明日の医療と今日みた夢と

医師。夢療法家。エドガー・ケイシー研究家。臨床分子栄養医学研究会認定医。
「からだ」と「こころ」と「たましい」の医者として患者さんに寄り添います。

 

嫌煙家です。

 

平成以降、ずいぶん非喫煙者にやさしい社会になりましたが

それまでは飲食店や新幹線でも我慢を強いられましたよね。

不快に感じる人がいるとわかるだろうに

よく吸えるなあーと思っていました。

火のついた線香を持ち歩いていたら非常識だと思うだろうに。

 

偏見なのでしょうが

吸い殻のポイ捨てを見るにつけ

喫煙者にはマナーのわるい人が多いのでは?

と感じてしまいます。

 

タバコの是非を問う議論は

自分も含めてこんなふうに

感情的なものが混ざってしまう傾向があります。

 

 

喫煙は健康に悪影響というのはもはや常識。

疫学的にも数多くの疾患のリスクになることがわかっています。

 

肺がんが懸念されることが多いですが

ほかにもCOPD(慢性の肺疾患)、虚血性心疾患、

脳血管障害、歯周病 などなど。

受動喫煙の害も明白になっています。

喫煙は「ゆるやかな自殺」という表現も見たことがあります。

 

 

ところが!

ケイシー先生は喫煙を容認しています。

驚き。

納得できます?

私はできません。

 

 

ある人は、アルコールはいっさいNGと強調される一方で

「タバコは適量ならばよい」と言われている。

結核であっても、湿疹であっても、17歳であっても

「適量ならばよい」という回答。

いままさに咳をしている人にも

「半分に減らせ」「間隔をあけろ」といった指示にとどまり

「やめろ」とは言わない。

 

もちろん、しっかりNGを出された人は何人もいます。

しかし基本的なスタンスとしては

「度が過ぎるのはダメ、ある程度ならOK」

ということなのです。

人によりますが5~6本/日ならばよい。

むしろ有益だ、と言われた人もいます。

うーーん、まじか。

 

 

ケイシー的理由は

おもに、神経を鎮める

神経ストレスがあるときには有効

ということのようです。

 

話題にされることは少ないですが

現代の研究でもニコチンには

心拍数上昇や感覚情報処理機能の向上のほか

緊張緩和や覚醒効果などの作用があり

カフェイン同様、プラスの効果があることも分かっています。

 

愛煙家とされる人の意見を拾ってみると

タバコは心理的緊張力を高め

精神的な作業能率や注意力を 向上させる。

量によっては逆に心理的緊張力を低下させ

夢想や空想を引き起こすが

両者のバランスがうまくいけば創造的活動 を生み出す。

摂取量に配慮すれば人間にとって有益である。

…と言い切られたりしています。

 

 

じっさい、タバコに限らず

一般的によくないとされる嗜好品も

受ける影響はほんとうに人それぞれで

ヘビースモーカーなのに元気で長生きしている人もいる。

こういうものは毒性とその人の耐性によって決まるのでしょう。

体質としての強靭さや、そのもの以外の生活習慣の要因もある。

 

究極のところ

なんでも身体にわるいと思って摂取すれば悪影響が出るのでは?

シェディングなどもそういう一面は確実にあると思っています。

 

 

では、よいと思って摂取している場合にはどうでしょう?

もちろん毒性の強さによりますが

悪影響が軽減される可能性はあると思います。

 

ケイシー先生も意識の問題、と言っています。

 

「私にとって、紙巻きタバコによる喫煙を少し再開することは、有害というよりむしろ有益である可能性があるということでしょうか?」 

「有害というよりは有益である可能性がある。それはむしろ個人の意識の問題であり、賛成か反対か、自身の中に維持されているものを認識することによって感じられるものなのだ」

(900-250)

 

 

そもそもタバコは南米原産で

古くは西暦692年のものとされる壁画に

喫煙している神様のレリーフがあるそうです。

現代でもネイティブアメリカンの神聖な儀式で使われています。

タバコはスピリットの扉をひらくもの

 

“パイプでタバコを吸う”という行為は、

パイプから天上へ立ち昇る煙を通じて“大いなる神秘”と通信し

会話するということである(wiki)

 

神聖なものとして扱われていたタバコは

コロンブスによってヨーロッパに伝えられ

当初は薬と同じ扱いであったといいます。

 

 

気になるのは、ケイシーの時代のタバコと

現代のタバコは違うのでは?という疑問です。

ケイシーは

混ぜ物がよくない、純粋なものがよい、と言っています。

メンソール入りもNGとされた人がいます。

 

現代のタバコには各種の添加物が入っており

それが有害作用をもたらしていると主張する人もいます。

品質を安定させるグリセリン

燃焼サイクルを早めるための助燃材

に加えて、真偽は知りようがないですが

依存性を高める物質が(意図的に)

添加されているという説もあるくらいです。

トータルでは大気汚染のPM2.5と同様、

またはそれ以上の有害なものが含まれると言われています。

 

それなら自らタバコを栽培して

何も不純物のない紙巻きタバコを自作すれば?

とも思ったのですが

日本では、自家栽培は認められていても

自家製造は認められていないということです。

葉っぱを購入してくるくる巻いて作るのはOKなので

その時間も含めて喫煙を楽しむマニアもいるそうです。

 

 

さらにケイシーは“ブランド”による差異も言及しています。

いまはもう存在しませんが

Pall Mall 、 Piedmont、Virginia Rounds

という銘柄が勧められていました。

植物なのでとうぜん、産地による品質の差はあるでしょうね。

 

 

ちなみにパイプよりも、葉巻よりも、

紙巻きタバコがよいとケイシーに言われたケースがあります。

日本ではなじみのない“噛みタバコ”は

胃にわるいという理由でNGとされました。

朝食前や夜の12時以降にタバコを吸うのは有害、

とも言っています。

このへんは納得です。

 

 

現代の電子タバコはどうなのかというと

ニコチンやタールといった有害物質は含まれませんが

グリセリンや食品添加物であるプロピレングリコールなどの

物質を加熱したものを吸い込むので、

身体によいとは思えません。

 

じっさいに電子タバコによる急性の肺障害や

肺気腫の悪化は報告されています。

むしろ自然物であるタバコ葉のほうがよいのかも?

 

加熱式タバコについては、タバコ葉を加工したものを

火を使わずに加熱してエアロゾルを吸うので、

ほぼタバコと同じ扱いになります。

 

 

依存性という観点からは

ニコチンはコカインやヘロインと同程度とされています。

 

数多くある薬物のなかで

じつはもっとも依存性が高いのはアルコールです。

これを容認しておきながら

他の薬物を「ゼッタイ、ダメ」というのは

いかがなものかという専門家もいます。

 

うちの師匠(坂内慶子先生)は

「タバコ=大人のおしゃぶり」という表現をしていました。

心が安定するのですね。

「一服」という言葉がありますがおそらく

みんな仕事が一段落してくつろぐときに

ホッとしたくて吸うのでしょう。

 

自分にとってそれはコーヒーだったり

甘いものだったりしますが

あきらかにそのとき脳内では快楽物質が出ています。

ずっと前からすでに依存が形成されています。

 

 

私見ですが

依存症という病気は

生存ギリギリの状態なのだと思います。

死なずにいるために何かに縋る必要がある。

ひとつの依存症がやめられたとしても

生きるつらさが軽減されない限り

別のものへの依存が生じる可能性がある。

いまそれをとりあげることが本当によいのかどうか、

そこは考える必要がある。

 

言い訳に聞こえるでしょうが

みんな弱い部分はある。

何かに依存したっていいのかも。

人生が崩壊しない程度の依存で

多少健康が害されたとしても

いまそれで生きていけるなら。

 

そこまで切実な人は多くはないのかもしれません。

でも切実さの程度は本人しかわからない。

本人もちゃんと把握しているとは限りませんが。

 

 

 

繰り返し「有害ですか?」とケイシーに尋ねた人がいます。

みんなやっぱりタバコの害は心配なのですね。

ケイシーの回答はいつもと同じ「適量」でしたが

では、やめたいけどやめられない人は

どうすればいいのでしょうか?

 

「どうすれば喫煙癖をなくせますか?」

「“やめる”と心に決めることだ!」

(3258-1)

 

身体依存になっている場合には

それだけでは困難かもしれません。

とはいえ何よりもまず、そう思う気持ちが重要でしょう。

 

ケイシーは、吸った後にリステリンで含嗽すると

吸いたい気持ちが軽減すると言います。

現代でも、喫煙の衝動には歯磨きがいいと言われていますね。

また、入眠するときに「吸うと吐き気がする」という

暗示をかけてもらうのも有効だそうです。

 

 

現代日本では保険診療も可能です。

禁煙外来での成功率は65~80%

1年後の再喫煙率は40~70%

この数字の評価は分かれるところかもしれませんが

いずれも自力で禁煙した場合よりも良好な結果となっています。

通常は禁煙補助薬を使用するので

副作用が出る可能性はあります。

 

 

 

あれこれ考えてみても

やっぱりタバコはキライです。

もちろんこれからも

診察室で「タバコはやめましょう」と言い続けますが

以前よりはトーンが緩くなってしまいました。

 

 

こんな自分ですが、その昔

「ぐれてやる!」と思って手を出したことがあります。

ほんの少し吸い込んだだけで吐きそうになってやめました。