映画とギャンブルをこよなく愛する、借金まみれの父。
父の更生を願う、アラフォー映画好きの娘。でも今は無職。
どん底の家族に映画の神様が手を差し伸べる。家族再生の物語。
 

おそらく、少なくとも女の子なら一度は、自分の父親を「しょーもないなー」と思ったことがあるはず。しょーもないけど、これが私のおとうさんなんだよなー、という気分。見捨てるわけにもいかないし、嫌いになりきれるわけでもない。だからといって「自慢の父です」だなんて天地引っくり返っても言えない。なんだか本当、、、困ったなぁ。
まさしく今私は自分の父親に対してそんな気分を抱いているのですが、、、。
 

物語にでてくる父親は、映画とギャンブルに明け暮れて家庭は顧みないお父さん。ほんっと、しょーもない。でも、憎めないキャラなんです!自己表現も上手じゃなくて極端だから、いきなり土下座してみたり、家飛び出してネットカフェに引き籠ったりしちゃいます。でも彼の書く映画の感想には、映画愛のみならず、娘に対する愛、家族に対する感謝 が溢れているのです。

この、控えめながらポジティブなお父さんの自己表現が、物語の原動力です。
こんなうまい展開ってあっていいのか?!ってくらいすべてが丸く収まる方向で展開しますが、キネマの神様があのしょーもないお父さんに微笑んでいるんだから、そんな奇跡的な出来事にも説得力があります。
 

薦めてくれた人が、最後の10ページを読むのがもったいなくて、と言っていたのですが、まさにその通りでした。
結末は想像がつく。大団円でしょ、しかも泣ける感じの。
だからこそ、一人で、特等席で、読みたい。そう思わせる、エンディングです。


それで私も、いろいろ考えました。
さくら咲き乱れる公園のベンチとか、見晴のいい展望台とか。
そんな開放的な場所で読むのがたぶん一番いいと思うの。
(でもちゃんとハンカチ握ってね。たぶん泣くから。)

なのに忙しさに負けて結局、自室の椅子で読むはめに、、、。
まぁ、DVD観るにも仕事するにも何するにもいつもここだし、この椅子が私の特等席ってことなのかしら。

(特等席 って言うくらいなら、映画館の 後ろから3列目のど真ん中 なんていう超ド級に快適な席をイメージしたいのに、現実はこれか、、、ちょっとショボイなぁ、、、。)
 


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