手紙を書くのって、ちょっと億劫じゃないですか?
普段はメールで要件のみ、最近当たり前に使われるようになってきた、
Lineみたいなチャット式のやり取りに慣れていると、手で字を書くという作業がとてもめんどくさく感じられるのではないでしょうか。漢字わかんないし、書きなれなくて字汚いし恥ずかしい。そんなこと思ってためらっていると、お返事を出さずに過ぎてしまったお手紙がどんどん溜まってゆくわけです。

私なんて、高校の時にお世話になったホストファミリーに、英文で手紙を書くのが凄まじく難儀で、ものすごく頑張って一通出したきりになっています。あぁ、あの素敵なお父様、いまごろ素敵なおじい様になってらっしゃるんでしょう、、、(遠い目)。でももう私のことなんて忘れちゃってるか、無礼な小娘だと思われちゃってるんだろうな。悲しい、、、。

そんなあなたに(わたしにも)おすすめなのが、『三島由紀夫レター教室』。
年齢も性別もバラバラの、個性豊かな5人の登場人物たちが、手紙のやり取りをするという書簡体小説です。手紙文のお手本として読まれることも目的としているので、ひとつひとつの手紙はしっかり「完結した世界」になっています。

ラブレター、ファン
レター、借金申し込みのための手紙、脅迫状、英文の手紙を書くコツ、お見舞い状、妊娠を知らせる手紙、などなど多彩なヴァリエーション。
しかもどれも軽やかでおしゃれで小粋な感じ。こんな風に
嫌味なく、思いを伝える手紙が書けたら、いいのになぁ。
 
三島由紀夫の作品をちゃんと読んだのは、これが初めてでした。
つうは『金閣寺』とかから入るのでしょうが、たまたま書店で山本容子の表紙絵に目が止まり、手に取って読みだしたのが運のつき。手紙文だけで構成されているのに、背景が見えて、人物が動くんです!!本屋で30分ほど読みふけり、そのまま購入したというわけです。

人物をただ描写するのではなくて
、その人物が書く手紙を書くというのは、とても難しいことだと思います(手紙を書きつけてない身からすればとくにそう思う)。5人の登場人物それぞれを個性豊かにさらりと書き分け、間にさりげなく自分の信条まで挟み込む三島の筆力に圧倒されました。

もっと読んで
みよう、三島由紀夫。

三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)/筑摩書房
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