- 「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ/ダイヤモンド社
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この本ですが、先日のタイからの帰国のフライト中に読んでみました。
私は日本の近代史の動向に強い関心を持っています。
日露戦争でアジアの国で初めて欧米列強に戦争で勝ち、太平洋戦争で壊滅的
な打撃を受けたものの、奇跡の復興を成し遂げた日本について個人的に誇り
に感じています。
また日本の歴史はこれから発展するASEAN諸国に対する偉大なお手本にもな
ります。事実、太平洋戦争を通じて多くのASEAN諸国が欧米の占領下から独立しました。
さて、明治維新以来、繰り返された日本の成功と失敗の要因は何であるのか、
日本人は往々にして極端な集団行動を取り、時には滅私奉公の精神に陥りが
ち、といった事がいつも頭の中で”もやもや”していましたが、本書を通じてその
謎が何となく解けました。
著者によれば、物量や技術力の差も敗因の一つであったわけですが、日本の
「敗戦七つの理由」を上げており、それぞれに簡略化したコメントを添えると以
下の通りです。(詳しくは本書をお読み下さい)
1.戦略性:日本人に欠けるグランドデザインの視点、戦略性が弱い
⇒戦略となる指標を取り出す事が出来ない
2.思考法:日本人は革新が苦手で練磨が得意
⇒創造的破壊が生まれにくい、環境変化に弱いシングルループ学習
3.イノベーション:既存のルールに習熟する事が日本人の気質
⇒ルールの変化(既存指標の無効化)に対応能力が弱い
4.型の継承:日本人は創造ではなく、方法に依存する
⇒過去の成功体験が勝利を妨げた
5.組織運営:組織の上層部からの現場活用が徹底的に下手
⇒上層部の権威主義、現場への無理解、硬直化した人事システム
6.リーダーシップ:評価が結果よりもプロセス重視
⇒保身と無責任が蔓延する組織へ
7.メンタリティ:厳しい現実から目を背ける思考への集団感染、リスク管理の誤解
⇒縄張り・派閥等から都合よく脚色された情報しか入らなくなる。
場の空気により誤った判断が正当化される
日本軍に対してアメリカ軍は当初劣性でしたが、日本軍の弱点を見抜き、戦い
のルールや戦略指標を自ら変えていって形勢優位になりました。日本の家電メ
ーカーとアメリカのアップル、マイクロソフトといった企業の戦略にも例えられて
おり、大変分かりやすい解説となっています。
太平洋戦争に敗れた原因として挙げられた7つの理由が、実は現代日本にも
息づいていて、今この国を覆う閉そく感の正体は、組織運営の基礎がまるで変
わっていない事で再び生み出されていると述べています。
気づかれた方もいらっしゃると思いますが、サラリーマンが所属する企業においても往々にして似たような状況なのです。
時代の転換点の今だからこそ、この失敗の本質を乗り越えなければなりませ
ん。製造業を圧迫する円高、高齢化社会、経済大国であった時代の終焉、出
口の見えない長期不況。ひとことで言えば、ルールが変わったのです。
神田昌典氏によれば、歴史は70年周期で回っており、過去日本は、明治維新
(1877)、太平洋戦争終結(1945)と歩んできました。
そうなると、2015年までに大きなインパクトのある社会変革が日本に起こると
されています。
既存のルールが変わる事を前提に多くの日本人が歴史の教訓を学び再始動できるよう準備が必要なのです。