九州電力は17日、今夏(7~8月)の電力需給見通しを発表した。川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市、計178万キロワット)の再稼働が夏に間に合わず、国内すべての原発が停止状態で迎える可能性が大きい。九電は東京電力から融通を受けるなど全国から電力をかき集め、需要に対する供給余力を示す予備率3%を何とか確保した。3%は安定供給を担保するギリギリの数字。原発を欠いた九電の供給態勢は限界に追い込まれた。(津田大資、小路克明)



 「猛暑だった昨夏以上に電力需給が厳しくなると危惧している。火力発電所でトラブルが起きれば、深刻さはさらに増す」



 福岡市内で記者会見した九電電力輸送本部の山崎尚本部長は、こう語った。



 九電は猛暑となった場合の電力需要を最大1671万キロワットと見込む。これに対し、供給力は最大で1722万キロワット。余力はわずか51万キロワットしかなく、予備率は昨夏見通しを0・1ポイント下回り3・0%となった。



 電力需要と供給量が乖離(かいり)すれば、発電所が次々と停止し、連鎖的な大規模停電ブラックアウトが起きる。この非常事態を防ぐのに必要な予備率が3%だ。



 今回の需給見通し策定にあたって九電は、「3%」確保に奔走した。



 背景には川内原発1、2号機の再稼働時期が不透明なことに加え、火力発電所のトラブルがある。



 今年3月28日、九電内に激震が走った。



 定期点検中だった電源開発(Jパワー)の松浦火力発電所2号機(長崎県松浦市、石炭、100万キロワット)で、クレーンでつり上げたタービン(100トン)が落下する事故があった。



 九電は松浦2号機100万キロワットのうち、38万キロワットの融通を受ける計画だったが、復旧のめどは立たず、計画から削除するしかなかった。



 後は他電力会社からの融通を増やすしかないが、苦境に陥っているのは九電ばかりではない。



 関西電力大飯原発3、4号機(計235万キロワット)が稼働していた昨夏に比べ、関電や中国電力など西日本全域の電力需給が逼迫(ひっぱく)している。



 九電や関電は融通電力を求めて東日本にも手を伸ばしたが、周波数の違いが大きな障壁となった。



 周波数が違う西日本の電力各社(中部電力含む)と、東日本の電力各社を結ぶ周波数変換装置の容量は120万キロワットしかない。しかも、運用上、緊急事態に備えて一定の空きが求められる。



 予備率「3%」を確保するため、九電関係者はギリギリの折衝を続け、東電から20万キロワットの融通を受けることになった。九電は東電も含め、他電力会社や新電力からの融通量を昨夏より69万キロワット増やし163万キロワットとした。



 だが、どこかの電力会社で松浦火力発電所のようなトラブルが発生すれば、3%は風前のともしびとなる。



 不安要素は他にもある。



 入札で余剰電力を買い取る「日本卸電力取引所」からの調達が、今夏は一層厳しくなる可能性が大きい。西日本全域に余力がなく、高気温によって電力不足に陥った際、各社の入札が競合するからだ。



 実際、需要が急騰した昨年8月19日、九電は市場から電力を調達することができなかった。



 一方、原発の代替電源の寄与は限定的だといえる。



 今回九電は、需要のピーク時間帯を、これまでの午後2時台から午後4時台に切り替えた。企業などで2時台の節電が普及したことに加え、猛暑だった昨夏は、夕方になっても気温が下がらず、家庭の電力需要が伸びたからだ。



 4時台は、九州で急速に拡大したメガソーラー(大型太陽光発電所)が役に立たない。九州の太陽光発電の総出力は今年8月現在、昨夏の2倍にあたる327万キロワットになるが、午後4時台の実際の出力は33万キロワットしか見込めないという。



 昨年7月に始まった原子力規制委員会による安全審査は、いまだ終了しない。規制委の“不作為”が電力不安を大きくしている。