「心と体と」 | 定年後の風景

定年後の風景

定年後や病気のこといろいろ書いてます

 

2017年ハンガリー作をアマプラ405作目となります。まあ中々ハンガリー作は珍しくて、米国で作れない欧州東欧系ならではの神秘性とエロチシズムがありますな。片時も目を離せず集中して2時間近くを見切ってしまいます。勿論動物と自然も出て来ます。

 

雌と雄の美麗鹿が、雪の森に出て来て、動物のエロチシズムをこれほど描写した映画は初めてかも知れません。交尾までは映しませんでしたが、もう殆ど交尾寸前で、殆どしてるのと同じだと思いました。しかもそれが人間男女の毎夜の夢の中に出て来ます。

 

夢の中で、牛肉精肉工場の別居してる部長男性と、臨時で来てる超美麗動物の化身のような謎の女性が、何故か現実には触れ合いは無いのに、毎夜の夢の中だけでお互い鹿になって性交渉してます。Hでっしゃろ?自分もこんな卑猥初めて感じましたわ。何なら自分も動物になってやってみたい。夢の中で毎夜。

 

しかし筒井康隆の小説にあったように、動物の交尾は一瞬で終わるらしいですけどね。知りませんが。じっくり見入らせる深みと演技持ってますから、ベルリン国際映画祭の金熊賞他多くの賞を受賞してる濃密さと完成度があります。

 

それである時、この工場で、何故か交尾高進剤なるものがあり、それが盗まれて警察が来て、これまた何故か、ムチムチの熟年豊満色気ムンムンの精神課女医が来て、精通はいつかとか、初潮はいつかとか、初体験はいつかとか詳細に面談して行きます。

 

窃盗と何の関係あるんかいなと、皆もこの男女も文句言いながら、次第にこの所長と臨時美人の聞き取りしてると、毎夜二人が夢の中で交尾してると変なこと言い出して、物語は始まります。

 

(以下ネタバレします)食堂で二人は会ったり言葉も交わしますが、超美女の臨時工員は堅物変わり者で、余り話もせず他の従業員とも言葉も交わしません。一方部長も中年ですが、割と男前で奥さんとは別居状態で、異様に堅物で、職場の雰囲気には自分も含めて完璧にきっちりしてて、決して風紀は乱しません。

 

まあ言えばそこがまた禁欲的で、余計にエロチックで煽情的ではおますわな。超美人の方も堅くて無口できっちりしてます。しかしこうした仲だから男女が燃え上がるのが分りますなあ。まあ全くエロチックでおましたわ。大人には堪りまへんなあ。禁じられた恋でおますわ。もうこうなると、禁じられた欲情と言った方が早いでんな。だから動物となって夢に現れるのか。

 

そう言うのを、地味に堅いきっちりした演出で描いてる大人の映画です。それでね、終盤盛り上がりになって、あ、と、ふとこれは女性監督やろと察して、いまWiki見ると、やっぱり女性監督でおましたわ。これはもう男には描けません。女の情念と、ひつこい拘りでおましたわ。

 

かなりねちこい硬質な演出と作風でしたな。この監督は、以前からかなり賞取ってるようです。女優もするようです。このひょんな窃盗事件の精神科医の尋問により、二人は意識するようになり、実際にも、もとから意識してたのが、より濃密となり、二人だけの秘密の会話もするようになります。

 

そして、ある時遂に、女性の方から一緒に横に寝て夢見ない?とか言ってきます。決して一般人の誘いでは無いのは二人には分ってて、そしたらと、奥さんと別居している部長の部屋で、ほんまに並んで寝ます。部長は床に寝てました。

 

さて二人して並んで同じ夢見たらどうなるかと思って、真っ暗にして眠りにつくまで暫く待ってると、女性が「眠れない」と言って来ます。「眠れないから帰る」と言い出します。男性は「眠れなくても泊まって帰り」と言い、結局二人は眠れぬ、夢見ない一夜をトランプして過ごし、翌朝工場へ別々に出勤します。

 

なので最初の盛り上がりと言うか、一歩進んだ夜は終わりました。しかもこの夜は女性から一歩進めました。しかし俗に言う関係は進みませんでした。女性は以前から自閉症気味で、人との接触に悩んでたので、以前からのかかりつけ老医にまた診察に行き、音楽がよいと言われ、CDを山ほど買って帰ります。

 

CDラジオも買って、音楽聴いたりまでして、要はあらゆる手立てで男性に接近しますが、男性は男性で、変に生真面目て、真っ正直で口数少なく、女性は悶々としてるのでした。男性は奥さんが部屋に来たりしますが、やはり気が乗らずに、真夜中に帰れとか酷い仕打ちしたりしてます。

 

なので、二人はそれ以上進まずに、しかしやっぱり毎夜男性鹿との交尾夢見て目覚めて、毎日工場では男性と逢って声は交わすにしても、これ以上は進めないと、男性はつれなさを続けていると、ついに女性はある夜、部屋のガラスを割り、大きなガラス片を持って衣服脱いで風呂に入り、左手首をガラスでスッと切ります。

 

すると、無茶苦茶リアルにビュッビュッと鮮血が吹き出し、女性はそれを見つめてます。バスタブの湯は見る見る真っ赤になって行くところで電話が鳴り、女性は慌てて血止めして電話を取ると、男性で「今から一緒に夢を見よう」とついに誘って来ました。

 

女性は慌てて病院へ駆け込んで応急手当を受けて、迎えに来た男性と会い、包帯をした腕で二人は部屋で結ばれました、とそう言う話でした。男性はもとから左腕が不自由で引っ込み思案でしたが、これで女性も左腕が包帯でグルグル巻きで不自由で同じになりました。

 

女性は美人でしたが、人付合いが不自由でした。牛の交尾剤窃盗の犯人は捕まりました。ま、これでお互いの不自由がお互いに補われて、結ばれたのでした。と言う意味だと思います。前半精肉工場の牛の屠殺解体場面がやたらリアルに詳細に描写された関連はよく分りませんでした。

 

物語にリアルさを醸したのでしょうか。女性の自殺を予見させてたのでしょうか。床はいつも血だらけでした。屠殺にはトミー・リー・ジョーンズが「ノーカントリー」で説明してた、殺し屋が使ってたシリンダー屠殺機が使われててすぐ分りました。圧縮空気で金属シリンダーを牛の脳に打込んで、一瞬の内に効率的に牛を屠殺する道具でした。