「デッドゾーン」 | 定年後の風景

定年後の風景

定年後や病気のこといろいろ書いてます

 

1983年米国作をアマプラ79作目となります。有名デヴィッド・クローネンバーグ監督、クリストファー・ウォーケン主演のSFホラーとなります。鬼気迫り、初見は不気味故に相当に怖かったです。それでまあ再観してみようと思いました。

 

クリストファー・ウォーケンの顔立ちだけでそれなりに恐怖感はあります。重大自動車事故の後、5年の昏睡から目覚めるとウォーケンは握手したり相手の素肌に接すると、その人の未来や過去が電撃的に映像として体感できる体質になってしまいます。(以下ネタバレが入ります)

 

あ、Wiki読み出すと原作がスティーヴン・キングでよく出来てて恐い筈です。恋人とのデートの帰りの事故であり、この5年で恋人は去り、他の男性と結婚して子供まで居ました。悲嘆に暮れますが、仕方の無いことです。

 

病院の看護師に触れると家が火事になってて子供が危ないと告げ、主治医に触れると、戦時中に生き別れた母親は未だ生きていると伝えます。ある意味不気味能力ですが、基本人助けになってます。しかし本人にはこの瞬間は死を味わう感じがして、非常に衝撃的で嫌に思ってます。

 

この能力を使うほど死に近づく気がすると言い、死に近づくほどこの能力が出てくると不気味なことも言ってます。この辺の不気味感、衝撃感はキングのタッチでピカイチであり、またクローネンバーグはその感触を見事に描破してると思いましたよ。

 

その能力は主治医医師の実体験にも基づき確証されて、テレビ報道もされ一躍有名となりますが、本人は嫌がってます。するとそんな時、町の保安官が未解決の連続殺人事件の捜査に、その神から授かった能力で犯人捜査に協力してくれないかと訪ねて来ます。

 

ウォーケンは何が授かった能力だ、これ使う時は死を感じる苦しみがあるんだぞと追い帰します。しかしやっぱり捜査に協力することにし、被害にあって殺されたばかりの女性の遺体の手に触れると、彼女の死の直前の情景が入って来ます。

 

勿論犯人が登場し、それが知り合いの男だとすぐに分ります。この場面は恐いです。自分が殺される情景が再現されて、こんなん思いつくキングはやはりイカレてると思いますよ。だから大作家になったのですけどね。この死のテレパス体感は筒井康隆の「家族八景」やトランブルの「ブレーンストーム」でも出て来てました。

 

犯人の家へ行くと、犯人は捜査の手が近づくのを感じて、2階の自室で、鋭いハサミを立てて、それに大きく口を開けて思い切り突き刺して、血だらけになって死んでました。2階に行くなと母親が銃を持って飛び出して来てウォーケンは撃たれましたが、思わず母親の手を掴むと母親は息子が犯人と知ってました。

 

直後警官に撃たれ母親も死にました。ウォーケンは人の役に立ちましたが、悪魔の能力とも見られたので隣町に引越しして、別の町で家庭教師始めます。生徒は町の有力者の子供でしたが、子供に触れるとと早速アイスホッケーしてる池で、氷が割れて子供が溺死する未来が現れ、ホッケーには行かさないようにして命救います。

 

するとその有力者宅に、次期大統領候補のマーティン・シーンが訪れ、その後近くの講演会会場で別れた女性を見かけて追い求めて、図らずもこの議員と握手すると、この議員は大統領に当選し、将来周囲の反対押し切って強引に核ミサイル発射ボタンを押す情景が現れます。

 

しかもかの女性は夫婦してこの議員の応援員してました。ウォーケンは葛藤しますが、結局は講演会場の2階にライフルを持って陣取り、議員を射殺することに決めます。しかし初弾は外れ二発目を撃とうとすると、議員は演壇上の隣に赤ん坊を抱いて座っていた元彼女から赤ん坊を奪います。

 

そして、それを掲げて盾にして我が身を庇い、被弾を免れ、その間にウォーケンは護衛の銃弾に倒れて一階に転落します。瀕死のウォーケンに議員が近づいて来たのでその腕を握ると、議員は赤ん坊を盾にして我が身を守ったとして非難浴び、拳銃自殺する未来の映像が現れます。

 

ウォーケンは死に際に「お前は終わりだ」と伝えて事切れます。赤ん坊を抱いた元彼女が駆け付け、どうしてこんなことに、と悲嘆に暮れて映画は終わります。ひょっとしてウォーケンの運命はこの使命を果たすためだったのかと思わせるのでした。

 

いやあ、面白いです。怖いです。よく出来てます。悲哀があります。ホラーSF感たっぷり、表現も優れてます。名画だと思います。1980年代の映画は手堅いですなあ。シンプルで力強いです。硬質です。クローネンバーグ監督は「スキャナーズ」「ヴィデオドローム」撮ったあとの作品です。

 

この後リメイク名作「ザ・フライ」 を撮ってますね。「スキャナーズ」で一辺にファンになりこの作品も再観したいです。これで製作10億円クラスで興収20億円だったようです。デッドゾーンとはこの死の感覚を伴う未来または過去の映像のことだと医者が呼んでました。