「ANON アノン」 | 定年後の風景

定年後の風景

定年後や病気のこといろいろ書いてます

 

2018年米英独国合作をアマプラ観第23弾となります。また例によってお勧め作をず~と流していくとふとお気に入りクライヴ・オーウェン出演のSFが出て来ます。オーウェンは驚異のデジタル合成映画「トゥモロー・ワールド」に出ててこれまた一遍に好きになった顔だけ憶えてる今世代の俳優となります。

 

SFの良作に出てますねえ。何かこうデジタルに合います。と言ってもデジタルとは分らないデジタル表現に合ってるという何とも気難しい好みです。本作も完全デシタル化された社会を描いていてまあ普通の景色の中で生活仕事してますが視覚に全部デシタルデータが表示されてます。

 

脳でなく恐らくは眼球に表示されるように改造されてます。しかも全員が義務的に改造完全管理されてます。まあ思うだけでデータをコントロールしたりできるため会社や事務所見ると皆は一応実体で通勤していて机に座ってるだけです。

 

恐らくはデジタルで仕事してるのですが全部脳内で思うだけでデータを処理して即ち仕事していて見た目机についてじっとしているだけです。勿論紙に印刷などしませんからほぼ動きがありません。食事したりもの食べたりはするようです。トイレも行くでしょう。

 

データや画像は全て視界内に表示され人々はデータ文字表示されながら生活してます。画像は実際の視界であったり脳内表示だったりしてしかもダイアログや時には全画面だったりするので視界としては実体なのか表示なのかは区別がつかないこともあるようです。

 

もっとも通常の普段の生活では実体表示だけでのようです。そこまでするならオールリモートで出勤や対面会議も要らない筈ですが何故か通勤や対面作業は残してあります。こういう中でのクライヴ・オーウェンの味がよいですねえ。何と言うか確かにSF向きしてます。

 

そしてこうしたデジタル完全管理社会の中で何が起こるかというとありえない隠匿不可能な殺人事件が発生します。どういうことかと言うと即ち実体としての殺人が起こってますがさらに一層不気味なのはそれが解明されない即ち巧妙なハッキングが行われているのです。

 

劇中でも「殺人よりハッキングの方が重要なのか」とクライブが聞くと上司は「そうだ」と答えます。殺人が何件か起こっても社会は崩壊しませんがハッキングは社会の根底を揺るがす重大事件なのでした。そしてこの不可能な筈の不気味殺人事件をクライブ刑事が上司と捜査解明に当たり謎の女性アノンに遭遇するのでした。

 

(以下ネタバレします)クレイブは連絡を受け署に向かって人ごみの中を歩いていると視界には全員の個別データや物の説明表示が出ですれ違う人全員の名前や個人データが開示表示されている社会です。するとふとすれ違った一人の女性に「検知エラー」と表示が出てます。

 

あまりに咄嗟であり得ない出来事だったのでクライブはあれ?と思いましたがそのまますれ違い見失いました。赤文字アラームで点滅表示でもすべきだったですね。署内では自殺した息子や盗みをしたメイドや正当防衛で射殺したと言う男など事件関係者が来てます。

 

しかし証拠が全て視たままの視界データとして保存されていてそれらを再生するだけで全ての事件は座ったままで一挙に解決します。モニターすらありません。再生動画も全て各人の視界に表示されるからです。即ちはプライバシーをゼロとしようとした社会でした。全員がそれを了解してました。完全管理できます。果たして生きてるのかですが。

 

そしてある時殺人事件が起こりいつものように被害者の視覚記憶を再生するとなんと自身から見た画像は記録されていなくて代わりに犯人の見る視覚映像に書き変えられてました。即ち犯人が銃を構えて被害者を撃つ映像になってました。ハッキングされ記憶データが書き変えられていたのでした。

 

前代未聞の出来事に刑事らは驚愕し社会の根幹を揺るがす大事件の発生となります。しかもその映像からは被害者のリアルタイムの視覚映像が既に犯人によって差し替えられており被害者は何が起こってるのか分らぬまま撃たれているようでした。難しい状況です。映画見てるだけでは状況を把握することは難しいです。

 

今これを書いてるのもネットのネタバレ記事を一心に読んで理解していってます。そしてこの状況が初めて理解されこの殺人事件が繰り返されて行くことになります。完全管理デジタル社会への反乱事件となります。まあ現実映像と記録映像の全画面表示が区別がつかないのは機能的には致命的欠陥でしょうか。

 

そうすると怪しいのは署へ向かう時にすれ違った無管理女だったかと捜査進めるとやはり女のデータはどこまで行っても何も無くしかも上司に渡した画像コピーすらも消去されてました。今の自分にも関わるハッキングが現在進行中で行われてました。女はわざとすれ違ったでしょうか。

 

女とすれ違った群衆一人一人の映像データも全て消去してました。ここまでやると却って自ら犯人を誇示することになり目立ちますね。あとでこれらはわざとやったことが分ります。そして遂にレズカップルの殺害現場でクライブは犯人に接触して追跡しますが逆に偽画像で命狙われ危機一髪逃れます。

 

犯人は確実自分の命狙ってます。そして遂に警察の分析捜査官の応援によってクライブ自身の記憶経歴を書き変え偽の犯歴を書き変えてくれと女に接近して見事囮捜査に成功します。クライブは女に接触出来てしかもその神秘性に惹かれ関係まで持ちますが私を騙したら酷い目に遭うわよと脅されます。

 

そして実際刑事だとバレると唯一の心の慰みの幼くして亡くした息子の記憶映像を消されかかります。しかし実際には犯人は別に居て彼女はただの管理社会の世捨て人でした。敢えて自己の情報を全部消し去り自由人自然人として生きることを決めたまあ言えばデジタルヒッピーやってただけでした。

 

それを知った真犯人が危ない世を渡る彼女を利用して次々殺人を繰り返していました。しかもそれは警察の分析捜査官の異常行動でした。ついにそれが明かされクライブは一端真犯人に撃たれますが犯人を見ないようにして撃ちまくってついにはしばき成敗できました。居合わせた彼女も無事でした。

 

事件が終わった後マンハッタンの曇る埠頭でまた彼女に会えましたが「私の人生を断片化して他人の記録に埋め込む」とか「でもその断片を探しても見つけられない」とか言っててこれは普通のことかもです。人は他人の記憶記録の中に生きてます。それを一人の人間にまとめるのはアルゴリズムとかも言ってて多分そうでしょう。

 

「私には秘密はない。見せたいものがないだけ」と難言葉を残して去っていきます。その去る姿は途中で消えて彼女の映像言葉はクライブにハッキングした映像だと分ります。要は彼女は無管理空間を彷徨ってる内に同じ手段を使って悪行働く分析官を見つけてクレイグに接近働きかけてワル分析官を退治したかったですね。

 

いくつもの死の瞬間の記録映像が出て来るたびに「ファイル終了」と出るのが印象的でした。死ぬのは確かにファイル終了だったですね。流行り言葉になりそうで実際流行ったかもです。監督はよく知らないですが一連の作風を踏襲した連作として見ると分りやすく味えたと思います。

 

かなり個性のきつい難作だったでしょう。常に画面に表示される細かい説明文字の出方などは中々味わいがありました。何とも静かな淡々と進む雰囲気が良かったですね。クライヴ・オーウェンはやっぱり雰囲気良くて共演のアマンダ・サイフリッドも良くて魅力的でした。