「登山とランニングの疲れ方について」
疲労の進行:
呼吸が荒くなる→全身滝汗→渇き→強い疲労感→
筋肉痛→痙攣(足攣りなど)→意識朦朧→行動不能
余談:
ちなみに富士山の登山道には休憩ではなく、
ほぼ行動不能になり道端で転がって寝ている人は割と普通にいる。(笑)
幸い1時間くらい寝ると復活するから遭難する人は少ないが、
シーズン中の富士山では毎日1人は遭難している計算になるから笑えない。
さて、
2025年5月某日、首都圏最悪級の登山道「丹沢バカ尾根」にて。
終着点の山小屋に1人の男性がやって来て、
「身動き出来なくなっている若い女性がいる」
と通報し、しばらくしたら親切なその男性に付き添われて入って来た。
もう1歩も歩けないと言い、
山小屋に泊めてくれと主張した。
山小屋の人はしげしげと彼女を見てこう言った。
「泊めるのは全然構わないのですが。
残念ながら明日は悪天候なんです。
1時間くらい休むと意外に復活しますよ。
先ずは休んだ方がいい。
それから決めましょう」
と絶妙なアドバイスをしていた。
私もそれが正解だと思ったが、
同時に登山の疲れ方について考え込んでしまった。
登山の疲れ方とランニングの疲れ方は結構似ている。
まあ、ほぼ全てのスポーツがそうだと言えばそうなのだが、
特に下半身に集中すると言う意味において、
類似点は多い。
また2024年5月に発売された、
講談社ブルーバックス「登山と身体の科学」においても、
登山体力とランニング体力には明らかに相関関係があると書いてあり、
私もそれを強く実感している。
さて、私は不摂生からブッ倒れた復活劇において、
2021年7月からランニングを再開し、
「25km走れるようになったら富士山に登る」
と言う計画をブチ上げた。
2022年春にはランニング能力が30kmに到達したため、
手始めに高尾山を最難関ルートの稲荷山コースで登ってみた。
この時点での私は実はかなり自分には実力があると思い込んでいた。
だが、驚くべき事態になり愕然とした。
登山開始直ぐ、稲荷山コースは無限階段地獄がいきなり始まる。
この感覚は非登山趣味人には恐怖を与えるに充分過ぎるのである。
全く終わらない駅の階段、
もしくは東京人なら「東京タワーを階段で登る」のをイメージしたら分かり易い。
あれの×3~5くらいが高尾山稲荷山コースと思っていい。
これはランニングの平地を走る行為とはかなり異質だ。
従って初めてだと慣れるまで1~2時間はかかるだろう。
私の場合、開始15分くらいで全身滝汗状態になった。
30分の地点で堪らず停止し、
来ている物を脱いで、
半袖シャツ1枚になって登山を再開したが、
ランニングでもそう体験しない超滝汗に驚きに驚いたのである。
もしかして30kmのランニング能力を持ってしても、
オレは高尾山に登れない?などと、
富士山どころの話ではない事態に愕然としたのである。
しかし幸い、ランニング能力がある程度向上していたら、
心肺機能は確実に合格ラインに到達している。
この時の私は「慣れ」だけが問題であり、
1~2時間後には一気に楽になり、
高尾山の隣の小仏城山まで縦走し、
ピストンで戻るまでを難なくこなせた。
その後は富士山登頂3回、丹沢表尾根縦走、
丹沢バカ尾根、奥高尾縦走路、
フルマラソン42.195km7回と、
快進撃を続けてはいるが、
全然順風満帆ではない。(苦笑)
相変らず登山もランも超絶苦しい。
日々のトレーニングを怠ったらアッと言う間に体力は落ちる落ちる。
そんな中、先日、筋トレはしているが、
登山とマラソンは大嫌いな娘を連れて高尾山に行って来た。
頂上に行くのは娘は初めてのため、
また、登山経験は小学生の頃、
金時山に登ったくらいなのでほぼ未経験者だった。
そこで私は往復をリフトにして、
中腹まで行くのを躊躇わずに選んだ。
使うコースも全面舗装路の1号路を予定していた。
だが、1号路は意外にも階段地獄があり、
正直私は登れるだろうか?と心配していた。
非登山趣味人は登頂に何の思いもないため、
あっさりとUターンする事はままある。(笑)
すると目ざとい娘は薬王院の入口にテントがあり、
無料の登山ガイドがいて相談にのってくれていた。
すると私が以前から登りたかった「富士道」を教えてもらえ、
しかも階段がなく、一番楽に登れると言う。
これは願ったり叶ったりで即座に富士道を選択した。
おそらくそのまま1号路を登っていたら、
娘はもう嫌だとなり、登頂していなかったと思う。
これは根性とか体力の問題ではなく嗜好の問題だ。
登山趣味の無い人に無理に登頂を勧める事はアウトだ。
実際、富士道は登山趣味人の私的には非常に楽で、
これは面白い道を教えてもらえたなと喜んでいた。
だが、それでも娘は富士道と3号路が融合して、
その後、6号路と5号路が交差する分岐点の休憩場所で、
「物凄く疲れたから休みたい」と言って来た。
だが、私は表情と行動を見ていて、
即座に「これは登山の疲れではない」と断定したが、
もちろん疲れてはいるのだろうから、
好きなだけ休ませた。
もう頂上は目と鼻の先なので、
ほぼ頂き状態だった。
すると15分くらいで登山再開し、
見事登頂し、1号路で一気に下山した。
凄い疲れたと娘は言っていたが、
私から見たら「全然余裕」であり、
それは強いて言うなら登山の不安から来る神経的な疲れと感じていた。
登山のアウトドア度は当然アウトドア趣味の中では突出して高い。
身動き出来なくなったら最後、
それは遭難だからだ。
その意味で常に緊張感がある趣味であり、
ランニングやキャンプとは全く違う感覚がある。
渓流釣りなんかも登山とその点は似ている感はある。
この精神的な不安を登山趣味人は意外に理解しない。
これもまた丹沢の表尾根縦走だったが、
典型的な目撃例がある。
何度か書いているが、
20代らしき男性と、
おそらく会社の上司で40代と思われる登山趣味人が、
その若い男性を誘って表尾根を登っていたのである。
多分若いから大丈夫だと思ったのだろう。
だが、丹沢表尾根は非常に険しく、
図をご参照頂きたいが、
コース定数で「32」の体力、
グレーディングでは「C」の技術が要求される、
中級向けのコースなのである。
ちなみに登山書における中級向けとは、
「非登山趣味人には登れない」のを意味している。
非常に危険だ。
どうなっていたのかと言うと、
最初の二ノ塔への急登でもうグロッキー状態。
上司はにこやかに「どう?登山って素晴らしいでしょう?」と、
声を掛けたら、
「僕、もう限界が来ています。ダメかも」
と答えていた。
残念ながら続く三ノ塔の登りの途中で完全にアウト。
足が止まっていた。
その先に待っている、
三ノ塔→烏尾山→行者岳→政次郎ノ頭→
新大日→木ノ又大日→塔ノ岳→バカ尾根下り→大倉バス停
など出来る訳がない。
おそらく二ノ塔から登山口のヤビツ峠に戻ったと思われる。
あるいは三ノ塔まで頑張り、エスケープルートで大倉バス停か。
登山の疲労は非常に恐い。
それはそう簡単に克服など出来ないからだ。
登山趣味人は登山に行って鍛えろと言う人も多い。
だが、これは間違いだ。
山岳救助隊の著作に、
「山で鍛えてはいけない。鍛えてから山に来い」
と言う名文があった。
確かにそう思う。
普段から自宅やジムで、
無酸素運動をして筋肉をつけ、
ランニングやジムで有酸素運動をして心肺機能を強化。
もちろん脚力も強化し、
そうして山に行くべきであり、
山で鍛えるためにワンランク上の挑戦をしたら最後、
遭難リスクは非常に高くなるのは言うまでもない。
今から15年以上前、ブログでは盛んに、
「50km歩ける体力が欲しい。
震災の時に娘の学校のある都心まで歩いて行って戻れる体力だから」
と書いていた。
今の私にとって、これは全然出来る行為になっている。
だがここまで来るのに、
医療ダイエットとトレーニングを開始してから5年かかっている。
フルマラソン能力や富士山登頂能力とは、
そう簡単に身に着くようなものではない。
地味で地道なトレーニングやランニングこそが決め手となる。
週に1度、登山に行ったくらいでは、
危険なだけだ。
日常的なトレーニングこそが最も大切だと痛感している。
なかなか治らない腰痛によりイライラしている今日この頃。(苦笑)
余談:富士登山
一番人気の吉田ルート(コース定数42.7)もしくは、
二番人気の富士宮ルート(コース定数40.7)から登る場合、
富士登山オフィシャルサイトのカロリーによる算出方法を見ると、
フルマラソン42.195km=2500~3500kcal、
富士登山=3000~4000kcalと明記されている。
富士登山とフルマラソンの両方の体験がある私的には、
この数値は恐ろしいほど正確だ。
1泊2日で富士登山をする場合、
間違いなくハーフマラソン級の心肺機能と脚力が必要だ。
もちろん富士山はここで高山病が加わるため、
コース定数30級の登山は事前に経験しておかないと無理に思う。
私的にもし富士登山の同行者を求める場合、
最低25kmのランニング能力と、
登山としては最低「丹沢鍋割山(コース定数32)」
「奥高尾縦走路(コース定数29)」級の登山経験者ではないと、
恐くて一緒には登れない。
さらに登山体力がOKでも高山病耐性問題があるため、
それでも何ら登頂を保証するものでもないから厄介だ。
富士登山成功の確率は想像以上に非常に低い。
天候リスクを加味したら初めての富士登山の成功確率は50%を切ると、
体験的に強く感じている。
ちなみに私の富士登山経験では、
体力と高山病は結果的にクリアしていたが、
天候リスクだけで以下の低さなのである。
2022年8月吉田ルート(100%。一発クリア)
2023年8月富士宮ルート(33%。悪天候により2回延期。3回目でクリア)
2024年8月須走ルート(50%。悪天候により1回延期。2回目でクリア)
初めての富士登山はここに体力リスクと高山病リスクが加わるため、
30~40%くらいの成功率に思っておかないとショックを受けると思う。
富士山頂上への道は非常に険しいのである。


