「本場のヨーロッパと日本のヨーロッパと」
先日、オーバーツーリズムの代名詞である富士山の直近、
河口湖駅に行った。
数年前に来た時のような異常なパンク状態は大幅に緩和されていて、
かなり混雑はしていたがバスに乗れないとか、
買い物もおちおち出来ないような事はなく、
様々な人種がいる中でも快適な旅が出来た。
最近、嬉しい事に外国人の日本の評価が高いらしく、
大勢の人に来てもらうのは、
様々な問題も指摘されてはいるが、
人間として正直な気持ちを言えば有難いし、
他者から評価されるのは嬉しいのが本音だと思うし、
そんな私もそう思っている。
河口湖駅では、
アジア人、白人、黒人、中東の人など、
特定の人種に偏らず、極めて大勢の外国人がいた。
80%くらいが外国人だったように感じた。
あるお土産店の中でこんな場面に出会った。
お店の人が若い女性に「エクスキューズミー」と呼び掛けた。
何かと思ったら、女性が手に持っていたゴミを捨ててあげると言って、
受け取っただけなのであるが。
その外国人女性は「ォオオーサンキュー」と言ってお礼を言いながらも、
かなり喜んでいる様子だった。
日本人同士だと割と当たり前のこの行動。
外国では基本、存在しない。
このような日本的行動が外国人達の知る事となり、
それが今や日本への旅行の大爆発となっているのかな?と感じた。
さて、ここで言いたいのは、
では「私達日本人はどの国に理想を抱いているのだろうか?」
と言う問題となる。
これはもちろん人によって違う。
だが、確実に言えるのは、
日本社会と政治はかなり以前から、
具体的に言うと明治時代から、
「ヨーロッパ社会」を模範として来た経緯がある。
欧化政策などはその典型であり、
今でも歴史教科書に載っている。
厄介な事に日本の知識人や政府関係者などは留学をしてヨーロッパから学び、
日本もヨーロッパのような社会システムを持ち、
技術を持ち、道徳観や生き方まで欧化しようとして来た。
この精神は今でも立派に生きていて、
アチラに留学した人などは未だに色々と日本が如何に遅れているのかを語りたがる。
特に北欧に理想を求める人は多く、
フィンランドの教育が凄いとか、
全般的に北欧は税金は高いけれど福祉が凄いとか、
日本も北欧を目指せと色々言う人がいる。
そのような人達が目指す社会とは、
高額の税金と高度な福祉国家となる。
ここで最大に問題なのは、
では本当にヨーロッパとは理想郷なのか?となる。
大抵の人は日本人留学生や赴任者の言葉を聞いて判断するのだが。
実は多くの経験者はここで無意識的に嘘をつくから厄介だ。
悪意はないが結果的に悪意の塊になる嘘だ。
基本的には「如何に日本が遅れているのか」をやたらと主張したい考えだ。
日本のマスコミが一時期やたらと褒め称えていたフィンランドの教育システムなどその典型だ。
いろいろと現地取材をしてテレビで報道していたが、
ここで大抵の日本人はコロリと騙されてしまう。
早い話、超優秀な学校を取材しているだけだ。
絶対に放火予告とか校内暴力で荒れている学校など取材しない。
分かり易く言うと、
日本だと開成高校とか灘高校を取材して、
日本の教育は素晴らしいと主張するようなものなのだが、
そこに気付けない。
またヨーロッパ社会には根強い人種差別問題もあり、
一部の非常に攻撃的な人達により暴力事件なども起きている。
当たり前と言えば当たり前だが、
リアルなヨーロッパ社会は日本人からしたら異文化なので、
住み易い訳がない。
パリ症候群と言う症状は典型的なものだ。
パリに憧れてやって来るが理想と現実が余りにも違っていて、
とうとう精神的に病んでしまう事態を指す。
分かり易い例を挙げてみよう。
グルメだ。
ミシュランで知られる星付きレストラン。
多くの日本人が憧れる世界でもある。
だが、リアルなヨーロッパの格式あるレストランは、
まともな頭を持った日本人であるのなら、
本音を正直に言った場合、
「とてもではないけど堅苦しいし緊張する」となる。
ここを言わない人は嘘をついていると言っていい。
先日来何度か書いているが、
NHK「チコちゃんに叱られる」では、
人間はことインドアで食べている限りにおいては、
脳が人間関係の緊張を本能的に感じるようにさせてしまい、
快楽物質であるドーパミンの放出を抑制させてしまうと言う、
最新の脳科学の知見を紹介していた。
つまり、インドアの堅苦しい場所での食事とは、
たとえどんなに味が良くても不味く感じる、と言う驚くべき実態だ。
そんなはずはない、美味しいと主張する人は早計。
この感覚は極端な状況を想定すると分かり易い。
自分の親兄弟子供がもし死んだ時、
三ツ星レストランで食べたら美味しいと感じるのだろうか???
もしそうだと言うのなら脳が壊れているとしか言いようがない。
味 < 人間関係の緊張
残念ながら人体とはそう言う作りになっている。
恐い現実を突きつけるようだが、
ヨーロッパのレストランでの食事が快適で美味しいなどと言う日本人は、
嘘をついているか無理をしていると思って間違いない。
デカくて偉そうな白人に囲まれて食事など快適な訳はない。(笑)
そもそもインドアだし。(爆)
さて、そんな中で出掛けた河口湖 音楽と森の美術館だったのだが。
館内には南仏をイメージしたであろうフレンチレストランがあった。
もちろん庭園も建物も全てヨーロッパそのもの。
このような場所に行くと、
かつてのバブル時代のヨーロッパ通達は、
「ニセモノだらけの場所に行ってどうする?」
と意見を今でもして来るだろう。
ではリアルな音楽と森の美術館とはどんな所だったのか?
日本にある日本的なヨーロッパ空間と言っていいだろう。
ニセモノだと言われたら間違いなくそうだ。
スタッフのほとんどは日本人だし。
従ってここでは日本的サービスが展開していた。
つまり日本人なら全然緊張しないシチュエーションが約束されていた。
しかも屋根には窓があって自然光がふんだんに入って来る仕掛けだった。
ほぼアウトドア環境で、周囲は日本人で、
料理だけはヨーロッパ。
いいとこ取り。(笑)
私のような幼い頃からヨーロッパ好きで、
クラシック音楽を愛しているが、
年を取ってしまい、異文化にすっかり疲れている身としては。
リアルなヨーロッパよりも日本にあるヨーロッパの方が、
遥かに遥かに居心地が良かったのは言うまでもない。(笑)
終わり
