ドラマ「SHOGUN-将軍ー」:思わず唸ったワンシーンについて | 東京・横浜物語

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ドラマ「SHOGUN-将軍ー」:思わず唸ったワンシーンについて

 

娘が何故かディズニープラスに無料で入れるとの事で、

私的には嫌いなサブスクで今やもう使っていないのだが、

せっかくなのでハリウッドでエミー賞を獲ったドラマ「SHOGUN-将軍ー」を見始めている。

 

全体的な感想は追って書く予定だが。

 

いやはやこれは凄い。

 

そりゃ~賞を獲るだろうなと納得。

 

微に入り細を穿つ作品に仕上がっていると思った。

 

先ずは使われている日本語が素晴らしい。

 

単純に良し悪しを比較するものではないが、

現在私が非常に楽しみに観ている唯一のドラマはNHK「光る君へ」だが、

この作品は歴史偏差値80超えの日本史も世界史も超大好きな娘は一切見ない。

 

使われている日本語が現代過ぎて視聴に耐えないと言う。

 

しかし「将軍」の日本語は何とも言えない実に上手い使い方をしてくる。

 

またセリフに哲学的な要素が非常に強く、

一言一句聴き逃してはならない緊張感が一話一話ずっと続くのである。

 

さて、これまで観た3話の中で特に印象に残っているワンシーンを今回は取り上げたい。

 

主人公の吉井虎永(真田広之)の配下にいる食えない伊豆領主・樫木藪重(浅野忠信)が、

何とも言えない味を出している。

 

豊臣秀吉が死に、時代は再び乱世に戻るのか?と言う不穏な状況の中。

 

残虐な一面を持っているヤバいヤツ。

 

しかし単純に嫌なヤツではなく、

時勢を読む冷静な判断力と裏切りも辞さない狡猾さを併せ持っている。

 

兵達からの信頼は厚いが恐れられてもいる存在。

 

死を恐れぬ一面もある如何にもな戦国武将。

 

伊豆領主でもあるからにして、

地位も金もある。

 

好色な面も垣間見せるが、その描写が何とも凄い。

 

地位と金に恵まれて、相当遊んで来た中高年の中に、

滅多にいないのではあるが、

これは絶対に「枯れた感」ではなく、

ある種の「飽きた感」もしくは「達観」とでも言うべき境地に達するヤツがいる。

 

これを映像にするのは物凄く難しい。

 

だが「将軍」では見事に描いて来ている。

 

役者によっては「単なるスケベ爺」「すかしたバカ」など、

「無理してる感」見え見えとなるからだ。

 

浅野忠信はその辺を見事に演じている。

 

そのシーンとは、家臣が藪重に「伊豆一番の遊女でございます」と言って、

美女を差し出す場面となる。

 

藪重は美女かつ遊女を見ても何の関心も抱かないのが分かる。

 

執務続行。

 

むしろ家来の若い男が余りの妖艶さに目を奪われたのを見逃さず、

「オマエは何を(スケベな目付きで)見ているのだっ!!」と窘める始末。

 

ところがさすがにエミー賞、事態はこんな事では済まない。

 

遊び慣れた男の凄味の次は、

「男を知り尽くした女の凄味」を魅せ付けて来る。

 

伊豆一番の遊女・・・・・

 

ヤバい女の凄味とは、男の経験・嗜好を瞬間的に見抜いて来る事にあるかと。

 

つまりこの遊女は藪重とは恐ろしく経験のある男であるのを瞬間的に見抜き、

普通の色仕掛けでは絶対に満足などしないのを理解している。

 

しかし猟奇的な趣味を持っている訳でもなさそうであり、

部下に対しても窘めるなど道徳的な一面も見せている。

 

手練手管の遊女は、自分に興味を持たない藪重と、

経験のない若い家臣がいる状況を的確に読み、

その場で若い家臣とおっぱじめるのであった。

 

さすがに驚く藪重。

 

時は1600年。

 

まだまだ殿様と家臣と、まして遊女の身分の違いは凄まじく、

下手をしたら首を刎ねられてもおかしくない場面。

 

だが藪重は言う。

 

「続けよ」と、

ようやく枯れていない好色な顔を魅せながら。

 

人間の持つ「性」や「老い」と言う厄介な要素を、

遊女や男娼と言う当時は普通にいた存在を的確に使って、

それを西洋人達の道徳観にもぶつけて描いて来ている。

 

これは近年稀に見る名作ではないか?と、

まだ3作しか観ていないながらも確信している。

 

他にも名シーンやアッと驚く権謀術数のオンパレード。

 

素晴らしい作品かと。