登山体力とランニングについて:講談社「登山と身体の科学」を参考に | 東京・横浜物語

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登山体力とランニングについて:講談社「登山と身体の科学」を参考に
 
昔々、私が20歳くらいの頃、神奈川県の丹沢山中で。
 
何故か突然、オートバイだの自動車だの乗り回しているだけではダメだと思い立ち、
若さだけを過信していた私は特に鍛える事もなくいきなり登山をしたのである。
 
しかも急峻で知られる丹沢を。
 
そして当然、私はバカ尾根と呼ばれる関東の登山愛好家が恐れる中腹で、
リュックを放り出し地面に転がってハーハーと肩で息をしていた。
 
正式名称は大倉尾根だが、ほとんどの人はバカ尾根と呼ぶ。
 
バカみたいに長いからと言う通説があるほどだ。
 
この登山道の入口には「北アルプスや富士山と同じくらいの累積標高がある」と看板があり、
注意を呼び掛けているほど厄介な登山道となっている。
 
普段から鍛えていない人など言うまでもなく、
普段から相当鍛えている人でも地獄を見る道だ。(笑)
 
さて、それから6~7年くらいして、
ひょんな事からドイツ語を習い始めた。
 
クラスに物凄い中年女性のランナーがいて、
その人を中心にしてランニング倶楽部が作られて行った。
 
私も参加する事になり、
徐々に走行距離を伸ばし、大会に参加するようにもなって行った。
 
そんなある日、その女性は驚くべき事を口にした。
 
「今度ね、バカ尾根を走って登るんだけどね。」
 
耳を疑った。
 
そんな人間、存在している訳はない、と。(笑)
 
だが間違いなく「丹沢の大倉尾根、通称バカ尾根」と、
単語がハッキリと聞き取れたのである。
 
当時はまだトレイルランニングなる競技は一般的ではなく、
山を走るなど想像の範囲を超えている世界だった。
 
いずれにしても私は当時からランナーの持っている登山能力の凄さに気付いてはいたのであるが。
 
その後色々あってランニングからも登山からも遠ざかっていて、
4年近く前のブッ倒れる前までは不摂生な生活を送っていて、
今よりも20kgほど太っていた。
 
その後、何度も書いているように医療ダイエットと続く医師の指示による筋トレ生活に入り、
ランと登山を再開して今に至っている。
 
そうして3年ほど前に25km走れるようになったら富士山に登ると言う計画をブチ上げた。
 
この時、何故この目標になったのかと言うと、
何度も書いているように、
「登山書には具体的な体力指標が一切書かれていない」
と言う悲惨な登山界の現状があったからだ。
 
入門・初級・中級・上級だとか星5つで体力度とか技術度を表したり。
 
最近ではコース定数(ルート定数)なる数字も出て来たが、
では実際のところ、中級だとか星3つとかコース定数42とか、
どんなレベルなのか?と問われると非常に曖昧な回答しか存在していない。
 
また、コースタイムなる異様な設定も大問題になっている。
 
富士登山吉田ルートでは富士登山オフィシャルサイトでは、
コースタイムが登り6時間、下り4時間5分となっている。
 
合計で10時間5分。
 
このタイムはかなり良心的だが、
初心者はこれでも大誤解してしまう。
 
この時間には「食事時間と休憩時間は含まれていない」のである。
 
さらに健脚の人が休みなく行ったタイムになっている。
 
大抵の本にもサイトにもこの最も重要な記載が抜けている。
 
「登山のコースタイムとは健脚の人が休みなく行った場合のタイムであり、
 食事時間や休憩時間は含まれていません」
と言う肝心要の記載がない。
 
もし普段から運動していない人が、
登山の世界には実はかなりいる「オレ様一番系」の、
「ああ富士山ね。登った事あるよ。チョロいチョロい。子供だって登っているし。」
などと言う発言を真に受けて本当に登ったら生死に関わる悲惨な事態になる。
 
それもこれも(富士山吉田ルートなら)コースタイム合計10時間5分。
 
頑張れば登れそう、と言う感覚。
 
非常に罪深い表記が何十年も登山の世界では罷り通って来た。
 
ようやく掲題の本では「コースタイムの見直し」について呼びかけを行なっている。
 
この「登山と身体の科学」と言う本では、
運動生理学の観点で登山のためのトレーニングを知る事が出来るようになった。
 
これまでは、登山の専門家だけど、
トレーニングの専門家ではない人が語るケースが極端に多く、
要するに遭難が起こった時だけ、
「もっと体力を」
と言うだけ。
 
具体的な事は一切言わない。
 
酷いケースでは一駅手前で降りて歩けだとか、
あるいは異様に細かい筋トレを多数推薦して来たりとか。
 
掲題の本で登山に役立つトレーニングを調査したところ、
ランニング・ジョギングしかない、と言う結果が出ている。

登山とランニングはかなり近いのが運動生理学の観点からも明らかになった。

そして本では山で鍛えると言う表記があるが、
これだけは止めた方がいい。

山岳救助隊の方が書いた著作の中で、
(タイトルを失念、失礼)
「山で鍛えようと思ってはならない。
 山は普段のトレーニングの成果を発揮する場所。」
とあり、これは正しいと強く思っている。

山で疲れて身動きが出来なくなった場合、
それは遭難を意味し、
その段階で既に命の危険に晒されている。

日常的な筋トレとランニングで鍛え上げ、
その成果を登山で試す姿勢が大切だと私的には思っている。

山中では「待った」は全く効かないのである。

もちろん登山自体の経験を積み上げて行くのが大切なのは言うまでもない。
 
また非常に興味深いコラムが載っていたので、
その部分のみを掲載しておく。
 
この本は新しい登山の世界を切り開く貴重なものだと思う。
 
大変大変お勧めである。

さすがに講談社ブルーバックスと言った感じである。