「拝啓、森鴎外様」とても考えさせられた展示会、そしてもう過去には戻れない件 | 東京・横浜物語

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「拝啓、森鴎外様」とても考えさせられた展示会、そしてもう過去には戻れない件

 

先日、東京・千駄木の森鴎外記念館に行き、掲題の展示会を鑑賞して来ました。

 

何とも言えない気持ちにさせられたので書いてみたいと思います。

 

この展示会は、森鴎外に宛てた手紙や葉書を鑑賞するものでした。

 

森鴎外の人脈は実に多岐に渡っていて、

様々な分野の人と交流があったのが分かりました。

 

今回書きたいのはそういう人脈の事ではなく、

手紙や葉書についてなのです。

 

森鴎外はドイツ留学経験のある軍医兼小説家ですから、

色々な人から手紙や葉書をもらっています。

 

当時どころか、ついほんの20年くらい前は、

外国に行く=人間関係は終わってしまう

だったかと思います。

 

もちろん手紙や葉書はありましたが、

ジェット機の時代になっても、それらが届くのは1週間くらいかかっていました。

 

もちろん今でもそれくらいかかります。

 

こうなると、生の人間関係と言う点においては、ほぼ無理です。

 

たとえ家族であっても疎遠になってしまいます。

 

事実、私の妹は20代のほとんどをイギリスで暮らしていましたが、

当時は妹とはいない存在であり、日常生活ではほぼ忘れられた存在でもありました。

 

コミュニケーションが途絶するとは、そういう事だったと思います。

 

それでも、明治時代の人達は、たとえ数ヶ月かかろうとも、

手紙や葉書に託してコミュニケーションを図っていたのは驚異的であり、

少ない紙面を上手に使いながら書いているのは感動的でもありました。

 

何て情緒があるんだ、と。

 

今の時代は、LINEを使用した場合、

文字どころか写真、動画まで瞬時に送れてしまいます。

 

さらにテレビ通話をONにしたら、

地球の裏側にいようともリアルタイムで顔を見ながら話すことすら可能です。

 

しかも余計な追加料金など一切かからず、基本的に無料で。

 

凄い時代になっていると思っております。

 

しかしここに情緒はありません。

 

では情緒のために手紙や葉書を自分は出せるのか?と言いますと。

 

無理です。

 

手間暇がかかり過ぎます。

 

情緒よりもリアルなやり取りの方が遥かに有難い感覚。

 

さらに海外にいても人間関係が維持出来てしまう驚異。

 

このような時代になるともう過去には戻れないし、

安易なノスタルジーなど消し飛ばされてしまうかと思うのです。

 

それ故、何とも言えない気持ちにさせられるのであります。


人の気持ちが詰まっている葉書。


それは既に過去の物になりつつある、と。

 

終わり


 

余談:

森鴎外記念館は、私はかなり頻繁に行く場所です。

 

何故かと言うと、明治時代にドイツに留学して、

勉強だけでなく恋愛までしていた稀有な人材だからです。

 

個人的にとても興味深い人なのであります。