「北ドイツの香りと若さと希望と」
トッカータとフーガ ホ長調 BWV 566
バッハにしては珍しい構成の曲。
第1トッカータ、第1フーガ、第2トッカータ、第2フーガで構成されている。
これは北ドイツ的な並列構成とされ、
若きバッハが北ドイツを旅した時にヴィンツェント・リューベックの演奏を聴き、その影響が強く見られるという。
個人的には、リンクを貼った動画だと7分41秒から開始される第2フーガをとても好んでいる。
提示される主題は若さ故の威厳を志向し、それは虚勢とも感じるが、
その虚勢すらも複雑な対位法音楽の構築と共に1つの巨大な激しくもスピーディーな塊へと化して行く。
複雑から単純へ。
聴者としてはこれがフーガなのを忘れてしまう。
だが、バッハはその渦中にペダルの重低音で再度主題を提示し、これが明らかに対位法音楽であるのを思い知らせる。
そうして曲はある種の上昇感を伴いながら進行し、
クライマックスの直前でペダルソロを導入し、重低音をこれ見よがしに響き渡らせ、終結へと向かう。
あくまでも私的な感覚で、笑われてしまうかも知れないが。
この曲は長調であるが故に、絶対に有り得ないのは百も承知の上で。
ピカルディの三度を何故か感じる。
上昇し、抜けて行くような感覚。
ピカルディ終止は聴者に上昇感、希望といった明るい未来を予感させる効果があると思う。
長調ではあるが、威厳と虚勢を感じさせる曲調故にそう感じさせるのかな?と思う。
まだまだ若く傲慢なバッハが魅せてくれる素敵なフーガかと。
https://youtu.be/HUWZ06JqK0I