学歴により、生活習慣やがん検診の受診状況が異なることなどから、死亡率が異なる。
国立がん研究センターは28日、中卒者は大卒者に比べ、平均寿命前後かそれ以下で亡くなる確率が約1.5倍になるとする推計結果を発表した。学歴によって死亡リスクに関わる喫煙などの生活習慣やがん検診の受診状況が異なる傾向にあり、研究チームはこうした違いを念頭に置いて対策を改善すべきだとしている。
個人の学歴と死亡率との関係の推計は国内初という。個人の所得や学歴によって健康状況に違いが出ることを健康格差と呼ぶ。欧米などでは政府統計を使って格差の状況を調べ、解消のための対策に生かしている。だが、日本では各種の統計で共通する個人番号がないことなどから把握しづらかった。
研究チームは個人の学歴を含む国勢調査のデータと、死因などの情報を含む「死亡票」のデータを活用した。両方のデータに含まれる「性別、生年月、住所」などが一致する人を選び、学歴と死因を結びつけた。こうして2010年時点で30~79歳で15年までに亡くなった人のうち男性約22万人、女性約10万人を調べ、対象者の地域が偏らないよう調整した。
その結果、短大や高専、大学などの卒業者をまとめた「大卒者」に比べ、小学校や中学校まで卒業した「中卒者」の死亡率は男性で約1.4倍、女性で約1.5倍だった。人口分布を考慮すると中卒者と大卒者の死亡率の格差は男女とも約1.5倍だった。
フランスでは男性で同2.2倍、フィンランドでは女性で同2.2倍などと報告されているのと比べて国内の格差は小さかった。研究チームは国内の衛生水準が高いことや、国民皆保険制度により医療サービスを受けやすいことなどが背景にあるとみている。