精子の加齢と卵子との相互作用
不妊症は女性のものだと思ってしまう男性や年齢による妊娠・出産がしづらくなるのは、女性だけだなんて思う方もいらっしゃいます。すべてがすべて間違いというわけではありませんが、おおむね間違いですその根拠となる論文をいくつか紹介したいと思います。Rosiak-gill A, Gill K, Jakubik J, Fraczek M, Patorski L, Gaczarzewicz D, et al.Age-related changes in human sperm DNA integrity. 2019;11(15):5399–411.1124人の男性の精液検査を行い、40歳以上(222人)と40歳未満(902人)でグループ分けし、一般的な精液検査のパラメータ(精液量、濃度、運動率、正常形態率等)に加え、精子の生存率、精子のDNA損傷率などを比較した上でさらに、精液検査が正常な患者と不良な患者でわけて同様の検討をしています。結論から言えば、年齢にかかわらず、精子の見た目には大きな変化は見られていません。しかし、精子の質(DNA損傷)には影響があります。実際に精子のDNA損傷があると、体外受精を行う場合であっても、顕微授精が適応となるなど、治療がステップアップしてしまいます。当院の研究でも、精索静脈瘤がある男性はDNA損傷率が高く、静脈瘤を治療することで、DNA損傷率が改善し、治療がより軽度なステップに戻るということが報告されています。また、精子のDNA損傷は受精卵へと発生していくプロセスにおいて、卵子の酵素によって修復されることが知られています。卵子と精子ってびっくりするくらい大きさも違いますもんね… DNA damage and repair in human oocytes and embryos: a review. Ménézo Y Zygote. 2010; 18: 357–365しかしながら、女性が35歳を過ぎていくと、この修復機能の低下も確認されており、男性の年齢が上昇すると、より一層妊娠率が低下することが知られています。精子のDNA損傷は、喫煙や肥満、糖尿病などの生活習慣によるもの、精索静脈瘤による影響などが挙げられます。不妊治療を受ける上では、男性の生活習慣の改善も欠かせないものと考えられています。ただ、女性の年齢との相互的な作用があることを忘れてはいけません。一般に、高齢な男性と若年の女性が子をなすことはあっても、逆はほとんど聞くことありませんよね。そのため、例えば男女ともに高齢に差し掛かっている時に、男性の精索静脈溜の手術をしたり、生活習慣の改善をするということだけでは、ベストではありません。ただ、よくいただくご相談で「妊活を一回休みたいけど、その間自分たちでできることはないか」ということがありますが、まさにそうした際には生活改善などによる対策が重要になります。不妊原因は男女半々、不妊治療は夫婦で行うものってことですね